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第2話

翌日、電車とバスに乗って「ダムによって移設された神社」という検索結果によって出てきた、ある小さな山里に私はいた。 バスを降りてから、すれ違う人もない静かな朝の景色を堪能しながらゆっくりと歩く。 ピンと張った冷たい空気を吸い込むと、背筋がすっと伸びる気がした。 山に続く階段に、調べた神社の看板が立てかけてあるのを見つけて行ってみる。 登ってみると、すぐに後悔した。 階段の段数はそんなに多くはないものの傾斜と高さがかなりあり、一段昇るのに足をかなり高く上げなければいかず、かなりのエネルギーを消費する。 頂上に着く頃には、来ていたジャケットを脱ぐほどに汗ばんでいた。 ふうと大きく息を吐く。 顔を上げると神社が見えた。 しかし特に何も感じるようなものはなく、少々がっかりしながらそれでも本殿に近付いて行った。 「おはようございます。」 歩き出した途端に後ろから声をかけられ、びくっとなりながらも振り向くと、竹でできた箒を持った私と同年代位の神主と思われる男性がニコニコとしながら立っていた。 「あ、おはようございます。失礼さていただいてます。」 「地元の方…ではないですよね?」 「ええ。東京から。」 「東京から?こんな…なんて、私が言ったらまずいですが、こんな何もない所に?」 「こちらに来たくて。」 「この神社に?」 この会話の中で一番大きな声を出して驚く神主さんに、ふふふと笑う。 「実は、小さい頃の記憶にある神社を探していまして…。こちらがその検索結果に出てきたものですから伺った次第で。」 「ああ、そういう事ですか。それで、記憶の神社だったのですか?」 「いえ、それとは違ったみたいです。」 「そうでしたか…。」 残念そうな顔をする神主さんに好感を覚えた。 すると神主さんが何かに気が付いたような顔をして、口を開いた。 「こちらが移設した後の記憶なのですか?」 「え?」 「こちらが移設する前の記憶だとしたら、外観もすべて違いますので…」 言われて、それはそうだと気が付いた。 「そう言えば、そうですよね。記憶にあるのはこちらが移設する前の神社でした。」 二人で吹き出すようにして笑った。 「そうすると、探し出すのはやはり困難でしょうか?」 「そうですね、名前でもわかっていれば見つけられるかもしれませんが…」 「それが、本当に小さな時の記憶のモノですから、まったく覚えていなくて。」 「そうですか…」 「頭の中にある記憶の神社を見せられればいいのでしょうけれど、何せ私の画力では到底…」 そう言った私に、何かを思い浮かんだように神主さんの目が煌めいた。

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