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第4話
「ともかく、芝野さんの記憶の神社がここだったのか、確認してみましょう?」
そう言って卜部さんは私を居間に連れて行き、リラックスしていて下さいと言い残して、奥の部屋に向かって行った。
お言葉に甘えて、あぐらをかいて座って待っていると、10分ほどで卜部さんが腕に抱えるようにしながら、過去には何かの菓子が入っていたと思われる贈答用の箱を持って戻って来た。
これなんですけどねと言って、テーブルの上にばさっと箱の中身を出す。小さな山をテーブルの上に作った写真の中から数枚を取り上げると、まさしくあの記憶の中の神社が写っていた。
「これです!間違いない…この神社です!!」
「やっぱりそうでしたか。」
卜部さんも山の中から一枚写真を取る。
「芝野さんの記憶とはどのようなものなのですか?」
聞かれて、見知らぬ着流しのおじさんに連れられて行った夏祭りの話をする。
「この階段を肩車してもらったんですよ…いやぁ、こうやって目の前に記憶だけのものだった世界が広がっていると言うのは不思議なものですね。」
私の話をじっと聞いていた卜部さんが、おもむろに立ち上がる。
「どうかされましたか?」
「ちょっとお茶を入れて来ます。お飲みになりますよね?」
「お構いなく。」
「いえ、私の喉がカラカラでひっつきそうなんです。」
「ああ、それならいただきます。」
それじゃあと台所に向かいかちゃかちゃと音を立て始める。
その音を聞きながら、私は目の前にある写真の山に手を伸ばし、その記憶と寸分違わぬ神社の景色に夢中になっていた。
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