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第28話
気を失った克敏に着物を着させると、抱き上げて居住地に向かう。
「そんなに嬉しいか?」
「主様、こういう時は知らぬふりをするものです…でも、はい。」
「気を失ってなくとも、ずっとこのように抱いたままでいても良いのだぞ?」
「そんな!嬉しいけれど、甘やかしがすぎますよ、それでは。」
「甘やかして何が悪い?我は克敏を我が無きところでは生きていけぬ程に甘やかすつもりぞ?」
「とっくに…とっくにもうなっております。」
我を見上げる目に涙が浮かぶ。
居住地の敷布の上に座ると、かつとしを膝に乗せ、我の方に向ける。
「どうした?」
「今朝、あの若い方に呼び止められ、主様には近付くなと言われた時の心の苦しさを思い出してしまい…主様と離れると思っただけでこのようになってしまうほど、私はもう主様なしでは生きてはいけません。」
そう言って、我の胸に顔を埋める。
「このような意地の悪い我なのにか?」
「…はい。」
「克敏はほんに我を嬉しがらせてくれる、唯一無二の者。克敏が離れたいと言っても我は手放さぬ。あの夏祭りで一度掴み損ねたこの手、もう二度とは離さぬ。良いか?」
「主様…はい。」
克敏が頷く。
その口に我の口を合わせ、舌を入れようとするが、克敏が横を向いてその口を離した。
「どうした?」
克敏の目が我に何かを訴えている。
読め、という事か。
「あぁ、これはしたり。すまぬ。だがさすがにこれ以上は我もせぬよ。克敏に散々搾取されたからのう…我のもからからじゃ。」
顔を真っ赤にして克敏が我の胸を拳で叩く。
「主様の意地悪っ!私は搾取など…しておりません!!」
「ほう?さすれば我の鏡で見せてやろうか?」
「え?」
「我は鏡に記憶を映せるのよ。お主との秘め事も、あの夜の克敏の覚えていない克敏も、全てをあの鏡に映し出せるのよ。」
克敏の顔が赤になったり青になったりと忙しい。
「我の言うが正しいか、克敏の言うが正しいか、見てみようぞ…先程のを。」
目の前の鏡に集中すると、克敏と我の絡み合う裸体が映し出された。
甘く可愛い克敏の声も聞こえてくる。
「こんなっ!やめて下さい!こんなものは見たくありません!!」
目を瞑り、耳を手で覆う。
いたずらが過ぎたか…しかし、克敏はこれでこのようになるのか…これはなかなか面白きものが見られた…
己でも意地の悪いとは思うが、そんな事を考えながら鏡への集中を切る。
静かに部屋を映すだけの鏡になったのを確認して、克敏が我の膝から立ち上がる。
その手を取り、克敏の足を止める。
「どこへ行く?」
「離して…下さい。」
しかし、そう言って我の手を振り払うも、その手に力は入らず、よく見れば膝も震えている。
我の掴んでいない手が着物の合わせを必死に押さえているのを見て、意地の悪い我が顔を出した。
「どうした?我のそばから離れとうはないと言うたのに、もうこのように我から離れるのか?寂しいのう。」
「主様…あっ、ダメです!」
克敏の合わせを持つ手も掴み、我の膝に仰向けに寝かせる。
「ちらと見えるこれは何ぞ?」
克敏の顔が真っ赤に染まり、我から顔を背ける。
肩は震え、口を結んで恥ずかしさを我慢しているのが分かる。
涙が頬を伝い、我の足に雫が落ちた。
さすがにこれはやりすぎたか…
「克敏…我が悪かった。」
「…主様…」
「されど、このままでは辛かろう?」
「大丈夫です。暫くすれば…あっ!だめです!!触れたら、主様に触れられたら…もうっ…ぁああっ!」
我の手が克敏のソレを擦ると、思いのほかすぐに我の手に温かい液体が付いた。
「だからダメって…主様に触れられた部分がとても熱くて、今までこんな事なかったのに…我慢できなくて…だから…だからっ!」
「克敏の体が先程の儀式によって、敏感になっておるようだな…ほら、このように触れると…」
克敏の顏をそっと撫でる。
「ひやっ…ん!あっ…また…主様のばかぁ…」
克敏が腰を引き、我から離れようとする。
「ばかは聞き捨てならぬな。それに、このように敏感な状態のままでは辛かろう?」
「大丈夫です!だいじょ…あっ!主様、触れない…でくださ…い…だめっ!あっ…うそっ!やめっ…だめです!」
我の手が克敏の着物の裾を捲り、先ほどまで我を受け入れていた部分の際に指を這わせると、窪みがそれを飲み込んでいく。
「ほう?これはすごい…ん?克敏、我も準備が出来たようだ。まだまだ我を搾取できるぞ?」
「主様…」
「どうした?」
克敏が顔を赤くしながら我に抱きつく。
「もう、我慢が出来ません。主様を早く…くださ…っあーーーーーー!」
最後の言葉は空に消え、我らは意識を失うまで貪り合った。
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