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第33話
次の日、我の言う通りに洞窟に来た楓と桂の慌てっぷりは凄まじいものだったらしい。
あちこちに散らばる着物。克敏の首に残る指の跡。克敏に我のを突き刺した状態で座ったまま死んだように眠る、帯が首に巻き付いたままの我。
ついにはその手で人を殺め、さらには己をも殺めたのかと、楓が真っ青になって我等に駆け寄り、二人に呼吸のあるを確認しほっとして後ろを振り向くと、桂は震えたままで立ち尽くしていただけだったと後から楓より聞いた。
その桂を奮い立たせ、楓がニ人で我らを離そうとした瞬間、我がそれに気が付き二人を気で弾き飛ばし近寄らせず、それを宥めながらなんとか着物を着させ、離れぬままとは言えようやく布団に寝かせたらしい。
目が覚め、落ち着いた我はずっと見守っていた二人に散々怒られ、泣かれた。
このままではこの地も荒れ、天の怒りを買う事になるだろうと。さすれば我が他の神と入れ替わられてしまうと、我が天に連れて行かれてしまうと言って、泣き喚かれた。
克敏をここに置き去りにしていいのかとも楓に問われた。確かに克敏は天には行けぬ身。我がこの地を離れる事になれば、ここに置き去りにしていく事になる。さすれば、今のままでは我の糧を与えられず、その身は消滅する。
例え魂が戻っても、入る器のない魂となり、天に昇るか、地に堕ちるか…最悪は消滅。
それを考えゾッとする。
すまなかったと二人の頭を撫でた。
このように二人に怒られるようでは、克敏にも叱られてしまうな。
そう言って笑った。
それに…と、心の内で思う。
我が諦め自暴自棄になれば、克敏を誰が救う?その手を誰が掴む?
我以外がそれを行うを見ていられるのか?許せるのか?
否!
克敏は我を主様と呼んでくれる我の唯一無二の者。絶対に手放しはせぬ。諦めはせぬ。
段々とこの身に活力が再び湧き上がっていくのを感じていた。
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