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第一章・2

「あんた、こんな界隈を一人でいたら、悪い奴にさらわれるぞ」  丈士は、そう警告した、つもりだった。  だが少年は、逆に丈士に挑むようにささやいた。 「お兄さん、悪い人でしょ」 「……」  図星だ。  俺は、悪い奴なんだから。 「何で俺が悪い奴だ、って解るんだよ」  悪党に見えないように、身なりには気を付けているつもりだ。  アップパンクの、黒髪ショートヘア。  視力はいいが、伊達メガネを掛けている。  鼻だけではなく、プライドも高い。  上唇が薄い人間は、クールでつかみどころがない、とは人相学のいう所だ。  一応大学に所属しているのだから、自分の悪の部分は隠している。  自分のやっている悪事は、ひた隠しにしている。  一瞬にしてそれを看破したこの少年は、一体何者なのか。

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