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第一章・4

 タクシーに乗り、少し遠いホテルへと走ってもらった。  近場のホテルで大学の知り合いにでも会ったら、面倒だ。  学校での丈士は、できるだけ目立たないように振舞っていた。  抜群に成績が良くイケメンの彼は、嫌でも人目を集めてしまうのだが。  親しい友人は、いない。  特定の恋人も、いない。  そんな丈士が、ウイスキーを一杯ごちそうしてくれただけの美少年と、ホテルに向かっている。 (なぜだ)  酔ってるからか?  いや、違う。 『お兄さん、悪い人でしょ』  七瀬の囁き声が、思い出された。  一目で俺の正体を、見破ったからだ。 (今度は俺が、お前の正体を見破ってやるからな)  そんな挑戦的な気持ちが、湧いていた。

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