4 / 75
第一章・4
タクシーに乗り、少し遠いホテルへと走ってもらった。
近場のホテルで大学の知り合いにでも会ったら、面倒だ。
学校での丈士は、できるだけ目立たないように振舞っていた。
抜群に成績が良くイケメンの彼は、嫌でも人目を集めてしまうのだが。
親しい友人は、いない。
特定の恋人も、いない。
そんな丈士が、ウイスキーを一杯ごちそうしてくれただけの美少年と、ホテルに向かっている。
(なぜだ)
酔ってるからか?
いや、違う。
『お兄さん、悪い人でしょ』
七瀬の囁き声が、思い出された。
一目で俺の正体を、見破ったからだ。
(今度は俺が、お前の正体を見破ってやるからな)
そんな挑戦的な気持ちが、湧いていた。
ともだちにシェアしよう!