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第一章・5

 ホテルに入ると、まず七瀬はシャワーを浴びたいと言ってきた。 「お兄さんも、一緒に入る?」 「いや、お楽しみはもう少し先に取っておく」  バスルームに消えた七瀬が水音を聞かせ始めてから、丈士は彼の衣服やバッグを手早く調べた。  服のポケットには、何も入っていない。  バッグの中には、財布、ハンカチ、スマホ。  除菌ティッシュに、ミントタブレット。 「と、なると。財布の中か」  丈士は、二つ折りの財布を調べた。  数万円の現金と、キャッシュカード。クレカ、電子マネー。 「これだけか?」  七瀬の持ち物には、身分証になるものが一切見当たらなかった。 「何者だ、あいつ」  ただの金持ちのボンボンか?  そんな風に考えた時、バスルームの水音が止まった。  

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