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第二章・6

 丈士の住むマンションは、大学からやや離れたところにある。  しかも、学生には贅沢な間取りの、新築だった。  家族で住める、4LDK。  丈士はそこに、一人で住んでいた。  照明を点け、荷物をリビングのソファに放り出す。  そして、洋間の一室に、丈士はすぐに入った。  そこには、家具も無ければ装飾も無い。  無機質な、LED水耕栽培のプラントがずらりと並んでいた。 「だいぶ、育ったな」  青々と茂る植物は、サラダ菜でもなければ、バジルでもない。  実は、丈士も知らないのだ。 「そろそろ石川(いしかわ)さんに、連絡しようか」 「石川さん、って、誰?」  突然沸いた他人の声に、丈士はひゅっと喉を鳴らした。  しかし、この声には聞き覚えがある。 「人の家に、勝手に入るな! 悪魔!」 「七瀬、って呼んでよ」 「寝たふりだったのか。それで、俺の後をつけて来たんだな?」 「正解!」  

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