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第二章・7
全く、と丈士は眼鏡を外した。
「とにかく、出て行け。そして二度とここへは来るな」
「僕、丈士さんのこと気に入っちゃったんだぁ。ね、石川さんのこと、話して」
でないと、と七瀬は丈士に流し目をよこした。
「おまわりさんに、ここに悪い人が住んでます! って言っちゃうから」
ふぅ、と息をつき、再び眼鏡をかけると、丈士は石川について語った。
「石川さんは、原崎会の組員だ。俺を手足に使ってくれてる人だ」
「ヤクザさん? じゃあ、丈士さんもヤクザなの?」
「俺はまだ、ヤクザじゃない。見習い、みたいなもんだ」
「ふ~ん。僕と同じだね」
「お前と一緒にするな」
石川はシノギのひとつとして、まったく新しい脱法ドラッグの開発を手掛けている。
法の取り締まりが厳しくなった今、まだ知られていない植物由来の化学物質を使ったドラッグを創り出し、闇取引するつもりでいるのだ。
「ま、使った途端に意識不明になって死なれたんじゃ、シノギにならないからな。まだまだ研究の余地はあると思う」
「安全な危険ドラッグ、かぁ。矛盾してるね。素敵!」
「素敵、だって?」
丈士は、しげしげと七瀬を見た。
この天使のような見た目を持つ生き物は、全くもって悪魔なのだ。
そう、思い知らされた。
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