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第二章・8
「じゃあ、丈士さんが育ててるこのグリーンは、みんなドラッグ予備軍?」
「そう。石川さんに時々新しい種子を渡されて、ここで育ててるんだ。収穫したら、あとは石川さんが他の施設へ持って行って、テストしてる」
「そこで、丈士さんの知らない人たちが試しに使って、トリップしたりしてるんだ」
「多分、ね」
ほぁ~、と七瀬は感心した様子だった。
「そこで、意識不明になって死んだりしてる人もいるの?」
「かも、ね」
うぅ~ん、と七瀬は身をよじらせた。
「丈士さん、やっぱり悪い人! すっごい悪い人! 僕の見込んだ通り!」
大喜びではしゃぐ七瀬を見ていると、なぜか誇らしいどころか情けなくなってくる。
「ああ、もう。うるさいから、お前はもう消えろ」
「え!? ここに置いてくれるんじゃないの!?」
「置くかよ。こんなうるさい悪魔なんか」
「じゃあ、ドラッグのこと、バラす。おまわりさ~ん!」
「騒ぐな!」
「ここに居ても、いい?」
「勝手にしろ」
やったぁ、とさらにはしゃぐ七瀬だ。
(俺は、ドラッグより危険な生物を家に持ち込んだのかもしれない……)
丈士は眼鏡を外して、眉間に手を当てた。
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