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第三章 怖い人と優しい人

 朝、丈士は目を覚ますと隣を見た。  栗色の毛玉が、大きな枕に乗っている。 「うぅ~ん」  それは寝返りを打ち、こちらに顔を見せた。  七瀬だ。  昨夜、無理やり居候になってしまった、悪魔だ。 「夢であって欲しかった……」  こうなってしまったものは、仕方がない。  丈士は起き出し、シャワーを浴びた。  歯を磨き、服を着て、バッグにテキストを入れる。  大学へ出かけようとリビングを横切ると、キッチンに七瀬がちょこんと座っている。 「……何、やってるんだ」 「朝ご飯、まだ?」 「俺は、朝食は摂らないんだよ」 「そんなの、体に悪いよ!」 「俺は悪い人なんだから、体に悪いことだってやるんだ」  そう言い捨てて、早足で外へ出た。  七瀬が背中に向かって何かわめいていたようだが、もう知らん。  丈士は、真面目な学生のふりをして、大学へ向かった。

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