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第三章・2

 丈士がゼミで講義を受けていると、四つ折りになった小さな紙が回ってきた。  開くと『今晩、空いてる?』と、書いてある。  こんなことを寄こしてくるのは……、周囲を見回すと、そこには小さく手を振る三嶋(みしま)の姿が。  彼は、時々丈士と関係を持つセフレだ。  しかし、最近その頻度が上がってきている。  三嶋が、やけに擦り寄ってくる。 (本気になられると、面倒だな)  そう考えた丈士は、返事にこう書いた。 『ごめん。今夜は、先約がある』  本音で書けば、ただ『×』とだけになるところを、精一杯の思いやりを装った。  見ると、三嶋は残念そうにしている。 (そろそろ潮時か)  これ以上、彼と逢瀬を続けるのはマズい。  付き合おう、何て言い出される前に、距離を置くことにした丈士だ。  新しく、悪魔というセフレができたことだし。

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