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第三章・4
(ずいぶん楽しそうだな)
ちびちびとウイスキーを飲みながら、丈士は二人をチラ見していた。
キャッキャと笑う七瀬に併せて、石川もにやけた顔をしている。
(あんな石川さんの表情、初めて見た)
いつもは、ほとんど無表情。
笑う時には、口角をあげるだけ。
そんな石川が、歯を見せて笑っている。
(七瀬マジック、か)
思えば自分も、一度寝ただけの相手を同じ屋根の下に住まわせることになったのだ。
七瀬の魅力のなせる業、といおうか。
悪魔的魅力、とでもいおうか。
「ねえ! 石川さんの電話番号、教えてもらっちゃったよ!」
「良かったな」
もうこれ以上、七瀬と石川のイチャイチャを見たくも無かったので、それを機に丈士はソファから立ち上がった。
「石川さん、明日の午前中でOKです」
「そうか。じゃあ、若い者を寄こす」
「石川さん、またね~。バイバ~イ♡」
強面の石川が、手まで振って七瀬を見送った。
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