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第四章 不機嫌と、意地と、強がりと。

「いただきま~す」 「いただきます……」  七瀬が丈士宅へ居候を始めてから、一週間が過ぎていた。  彼は頼みもしないのに、朝食を作ってふるまうようになっていた。 「勘違いしないでよね。これは、僕が食べたいから作ってるんだからね」 「じゃあ、何で俺の分まであるんだよ」 「いざという時、力が出なかったら困るじゃない」 「いざという時? 例えば?」 「悪事を働く時」 「お前はいっつも、それだな」  しかし、七瀬の料理の腕は意外なことに良かった。  胃が慣れると、もう朝食抜きの生活には戻れなくなってしまいそうだ。 「はい、ミルクティー」 「サンキュ」  こんな柔らかい朝日の中でのやりとりを終え、丈士は大学へ行くようになっていた。

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