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第四章・2
講義の始まる前、丈士の席に三嶋が訪れた。
「ねぇ、今夜空いてる?」
「ん? えっと……」
三嶋は、途端に笑顔を曇らせた。
即答が無い。
言い訳を考えているのだ。
僕と一緒にいられない、言い訳を。
丈士が口を開く前に、三嶋は悲しそうにつぶやいた。
「もう二週間も、してないよ。僕に、飽きた?」
「いや、そんなことないけど」
(『けど』!? 『けど』って、何だよ!?)
三嶋は憤ったが、そこは隠してしおらしい表情を作って見せた。
「淋しいな、僕……」
「解った。今夜、何時にする?」
折れた丈士を前に、三嶋は腹の中でガッツポーズを取っていた。
「一緒に食事もしたいから、7時でどう?」
「いいよ」
そこに教授がやってきたので、話しは中断された。
三嶋は、手をひらっとさせると、自分の席へ戻っていった。
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