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第四章・6
三嶋をバスルームに押し込んだ丈士は、七瀬に怖い顔をして見せた。
「おかしなこと、あいつに吹き込むな!」
「でも、あの人すごく丈士さんのこと好きみたいだよ?」
そんな人が、丈士さんのマンションで、僕と鉢合わせ。
「きっと浮気してた、って思ったよね。僕のこと、恨むかなぁ?」
「浮気も何も、俺はあいつと付き合ってもいないし、お前の恋人でもない」
とくん、と七瀬の胸が疼いた。
『お前の恋人でもない』
「そっか。そうだよね」
「何が?」
「うん、それよりあの人の服を乾かさないと。僕、やってあげる」
「できるのか?」
「少しだけど、魔力あるから」
三嶋の服をハンガーにかけて、七瀬は手のひらを温めた。
後は、スチームアイロンの要領で、服を少しずつていねいに伸ばしていった。
(あの人、丈士さんのセフレだ、って言ったけど。ホントかな。丈士さんは、彼のことどう思ってるのかな……)
僕だって、丈士さんのこと好きなのに。
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