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第五章 ちょっぴりブルー
高価な本革の大きなソファで、石川はコニャックを飲んでいた。
「こんばんはッ!」
「おぅ、驚いた。七瀬はいつも背後から現れるんだな」
「慰めてくれる、ってホント?」
「ああ。一体どうしたんだ。相良とケンカでもしたのか?」
七瀬は、ぷぅと膨れて見せた。
「丈士さん、知らない男の人を連れて帰って来た」
でね、と全く自然な動作で、石川のグラスを手に取り酒を含んだ。
「その人と、一緒にエッチしてるんだ、今!」
「そいつはキツイな」
一つ笑うと、石川は七瀬の肩を抱いた。
「じゃあ、仕返しするか? 相良に」
「仕返し?」
「七瀬、俺と一晩どうだ? お小遣いもあげるぞ」
悪だ。
めまいがするほど、この人は悪だ。
(ちょっと怖いけど、石川さんのタネも試しちゃおうかな……)
七瀬はコニャックを飲み干してしまうと、にっこり笑った。
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