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第六章 揺らぎ
とぼとぼと足取りも重く家路についていた三嶋だったが、自分の住むアパートが見えてきた途端、早足になった。
こんな時は。
こんなに気分が落ち込んで、苦しい時は!
部屋に飛び込み、三嶋は洗面台からスプレーボトルを手に取った。
顔に向かって一回プッシュする。
宙に浮くミストも、口を開いて吸い込んだ。
「あぁ……」
途端に、目の前が明るく開けた心地がする。
くよくよした気分が、軽くなる。
「ふん。相良くんなんて、なにさ」
そんな言葉さえ、ついて出る。
そして三嶋は、ソファにもたれた。
解ってる。
次に来るのは……。
気怠い心地と、安息感。
ぐったりとソファに身を預け、三嶋はその快楽に身を任せた。
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