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第六章・3
「いただきま~す!」
「……」
黙ってトマトのポタージュを口にする丈士に、七瀬は口を尖らせた。
「まだ怒ってるの?」
「別に、怒ってなんかいない」
「機嫌治してよ。もう石川さんとは、エッチしないから」
「誰もそんなこと、言ってないだろ」
じゃあ、と七瀬は身を乗り出した。
「今夜、エッチしよ?」
「今夜はダメ。先約あるから」
え、と七瀬は表情を曇らせた。
「また、あの人? 三嶋さん?」
「違う。石川さん」
今度は邪魔するなよ、と丈士は席を立った。
「大事な話なんだ。お茶らけたお前がいると、ぶち壊しになる」
「ねえ、朝ご飯まだ残ってるよ!」
「食欲、無いから」
そのまま丈士は、大学へ行ってしまった。
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