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第六章・4

「つまんないな」  丈士がいない間は、魔導書を読んで勉強するしかない、七瀬だ。 「メフィストフェレス様みたいに、人間を悪徳へ導くことなんて、僕にはできないよ」  一人前の悪魔になるための修行として人間界へやってきたが、そこに住まう者たちは。 「わざわざ悪魔の誘惑なんか無くても、立派に悪徳な人間たちばかりだったもんね」  はぁ、と七瀬はため息をついた。 「丈士さんも、その一人」  悪いけど優しい人、なんて珍しい。  その丈士が、今夜悪くて怖い石川と会う。 「何か、イヤなことに巻き込まれなければいいけど」 『どうだ? 相良は捨てて、俺の情夫にならないか?』  昨夜、七瀬は石川にそう持ち掛けられた。  もちろん断って、逃げて来たのだが。 「丈士さん、早く帰って来てね」  ソファのクッションを抱いて、七瀬はころんと寝ころんだ。

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