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第七章 幸せ、とは。
残念ながら七瀬の願いに反して、翌朝の丈士は不機嫌だった。
「頭、痛ぇ……」
ひどい二日酔いだったからだ。
「丈士さん、朝ご飯は?」
「いらない」
「フルーツだけでも」
「いらない、って言ってるだろ!」
そうイライラと吐いてから、頭を押さえた。
「うぅ」
仕方がないなぁ、と七瀬は薬と水を丈士に差し出した。
「はい、お薬」
「サンキュ」
薬を飲み、ソファに横たわる。
そこには、昨夜のショルダーバッグがそのまま置いてあった。
革の匂いが、今の丈士には毒だ。
重いバッグを、ソファの下にぞんざいに押し捨てた。
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