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第七章・2
「ダメだよ。お金を粗末にしちゃ」
バッグを拾う七瀬の言葉に、丈士はぎょっとした。
「中、見たのか」
「昨夜、見た。すっごい大金、石川さんに貰ったんだね」
「ああ」
思い出されるのは、石川の嬉しそうな顔。
それに付き合って、喜んで見せる自分の言動。
『石川さんも、これで昇進間違いなしですね』
そんなおべっかを使って、乾杯したっけ。
「くそぉ……」
何が悪だ。悪党だ。
結局、自分より一回り大きな悪にくっついて、尻尾を振って見せてるだけじゃないか!
かんかんと熱くなり、ずきずきと痛む丈士の頭に、ふわりと心地よい冷たさが下りてきた。
「七瀬?」
「僕の手、魔力で冷たくすることもできるから」
柔らかな感触の指が、丈士の髪を梳いた。
額に乗せられ、熱をどんどん奪ってくれる。
「七瀬」
「ぅん?」
「膝枕、してくれる?」
「いいよ」
七瀬の膝も、ほどよい冷たさになっていた。
「あぁ、気持ちいい」
幸せだ。
ささやかな、でも何ものにも代えがたい幸せ。
丈士はそのまま眠ってしまった。
バッグの中の金のことなど、忘れてしまっていた。
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