56 / 75
第七章・9
しばらく余韻を分かち合い、二人は離れた。
「体、べたべた。丈士さん、拭いてあげるね」
「サンキュ」
ウェットティッシュで、七瀬は丈士の体をていねいに清めた。
「お返し」
「え?」
今度は丈士が、同じように七瀬の体を拭いて来た。
「え、えぇ~? 丈士さん、今夜はホントにどうしたの?」
「何が」
「優しい。とっても」
俺は優しい、って最初に行ったのは、七瀬だろ。
だから俺は、七瀬に優しくできる。
七瀬だから、優しくできるんだ。
「え? 今、何て言ったの?」
「……こんなこと、二度も言えるか」
「もしかして、愛してる、とか言った?」
「言うわけないだろ、そんなこと!」
「意地悪!」
「優しいんじゃなかったのかよ!?」
賑やかで、温かな夜は更けていった。
ともだちにシェアしよう!