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第八章・4

 かちゃん、と七瀬の手からティーカップが落ちた。 「あ、れ? 何だろ。体が、痺れる」  それに、心臓がばくばくする。 「う……、気持ち悪い。吐きそう……」  バスルームへ行こうとして、七瀬は椅子から転がり落ちた。 「うぅ……、丈士さん……」  すると、目の前に彼の姿が現れた。 「丈士さん?」 『どうしたんだ、七瀬。俺はここにいるよ』 「三嶋さんのこと、捨てたって。ホント? いつかは僕のことも、捨てちゃうの?」 『バカ言うなよ。七瀬を捨てたりするもんか』 「嬉しい……。丈士さん、大好き」 『俺も七瀬が、大好きだよ』  愛してる、七瀬。  そんなことを言う丈士の幻覚と、七瀬はもつれる舌で喋り続けた。  彼に抱きしめてもらっているつもりで、カーペットにきつく爪を立てていた。

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