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第八章・8

 すっかり力の抜けてしまった七瀬をかき抱きながら、丈士はマスターに叫んでいた。 「マスター、七瀬を生き返らせてくれ!」 「なぜ、私にそんなことを言うのですか?」 「あんた、何者だ? 何でもお見通しの、得体のしれない奴だ。この際、神様でも悪魔でも構わない。七瀬を蘇らせてくれ!」  できなくはない、とマスターは言った。 「しかし、それなりの代償が必要です」 「俺が代わりに死んでもいいから、やってくれ」  マスターはうなずくと、その正体を明かした。  その頭部には、捻じれた角が現れた。  次いで、背に漆黒の大きな翼が現れ、太い尾が床まで長く届いた。 「あ、あんたも、悪魔だったのか」 「私の名は、マノス。悪魔見習いの指導者です」  七瀬も私が監視していたのですが、あなたという悪に出会ってから、彼の運命は一変した。 「七瀬を救うには、彼の死に関わる全てを消し去ることが必要です」  ていねいだが凄味のあるマノスの声に、丈士はゆっくりうなずいた。 「何でもやってくれ。俺の存在が消えてしまっても、構わない」 「よくぞ、言いました」

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