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第九章・9
くたんと力を抜いて、荒い息を吐く七瀬の身体を、丈士はウェットティッシュでていねいに拭いてあげた。
「あ……、ごめんね。ありがと……」
「いや、いいんだ。疲れた? 大丈夫?」
「うん」
「うん、って。何?」
七瀬は考えていた。
丈士さんとのエッチ、すごく素敵だった。
でも、どこか懐かしい気もする。
丈士さんも、まるで僕の身体のこと何でも知ってるみたいに、弱いところ責めてきたし。
「丈士さん」
「何?」
「僕たち、前にどこかで会った? そして、こうしてエッチした?」
「それは……。それは、そのうち機会があれば話すよ。それより、今は」
「今は?」
過去よりこれからのことを話したい、と丈士は言った。
「七瀬、ここに住んでくれる? 俺と一緒に、暮らしてくれる?」
「それは嬉しい申し出だけど、生活費とか大丈夫? 丈士さん、まだ学生でしょ」
「バイトするよ。貯金もあるし、平気」
じゃあ、一緒にいたい。
そう、七瀬はうなずいてくれた。
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