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第22話 なんとか進展はしたようで -3

□ □ □  藤堂に連れて来られたのは、電車で一駅先に行った所にある大きな家だった。  立派な門構えに気後れしてしまう。 「藤堂の家?」  一番可能性のある予想をしてみた。  けど、藤堂は弓月さんにお世話になっているって言っていたから、もしかしたら弓月さんの家なのかもしれない。 「はずれ。マサくんの家です」  表札を指しながら藤堂が笑って言った。  促されて、「塚本」と書かれた達筆な文字を見た瞬間、頭が真っ白になった。 「何で!?」 「もう帰ってるかな、と思ったから」 「そうじゃなくって、何でオレが塚本の家に来なきゃならないのかって聞いてるんだ!」  人の家の前だってことも忘れて大声で叫んでしまった。  今、塚本に会うのは勘弁してもらいたい。 「あれ?」  会いたくないって思った途端に本人が現れてしまった。  門の向こうからじゃなく、オレ達の来た方向から。  まだ制服だし、今帰ってきたところなのかもしれない。 「……塚本」  隠れようにも道中じゃ隠れる隙間もない。  穴を掘ってでも逃げ込む場所を作りたいくらいだ。 「二人して、どうしたの?」  同級生二人が自分の家の前で騒いでいたら、塚本のそんな質問も当然すぎる。  むしろ控え目なくらいだ。 「話があるんだって、瀬口が」  おい!  誰がいつ塚本と話しをしたいと言った!?  人の背中を押して笑顔でいい加減な事を言うな、藤堂! 「瀬口?」  話なんて無いから、こっちを見ないでくれ。  ちらりと塚本を見ると、いつもと変わらない表情でこちらを見ている。  オレだけあたふたとしてバカみたいだ。 「じゃ、オレ帰るから」 「は?」  本当に帰ろうとする藤堂を慌てて掴み止めた。  オレを置いて、自分だけ帰ろうとする雰囲気だったから。 「お前、人を強引に引っ張ってきてすぐ帰るってどういう了見だよ!」 「オレはマサくん家までのナビをしただけ。最初からすぐに帰るつもりだったよ」  聞いてねぇよ。  塚本の家に来る事も、オレが塚本に話があるって事も、藤堂がすぐに帰るつもりだった事も、全部初耳だって。 「彼織ちゃんは、帰るの?」 「うん。オレはほら、関係ない部外者だから」 「勝手に話を進めて関係ないはないだろっ!」  藤堂を掴む手に一層力を込めた。  オレにはまだ、塚本と二人きりになる心の準備ができてないんだよ。 「マサくんが丁度帰って来たところで良かった。瀬口を引き渡すから、仲良くね」  藤堂はオレを思いっきり無視して、制服を掴むオレの手をやんわりと除けた。 「ちょっと待てよ、藤堂!」  引き止めるオレを置いて、藤堂は本当に帰りやがった。  藤堂の後を追おうとしたら、門戸を開ける音が聞こえた。 「話、あるんだって?」  戸を半分開けて塚本が言った。  だから、話なんて無いんだって。  あれは藤堂が勝手に言い出した事なんだよ。  でもそういうのは全く言葉に出せなくて、そんな言い訳よりも、オレの興味は目の前にある塚本の家に方にあったりした。  今オレが考えているのは、この場をどうやって乗り切るかじゃなくて、塚本の家は何をしている家なのかとか、これだけ大きな家なら塚本の部屋も広いんだろーな、とかそんなどうでもいいことばかりだ。  あー……オレってバカ。  諦めるとか言い聞かせておきながら、塚本の事もっと知りたいんだ。  だから、犬猫呼ぶみたいに 「おいで」  って言われても、それが塚本なら後付いてっちゃうんだよ。  本当単純だよな、オレ。

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