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第24話 余計な所から問題定義-1

 塚本が解らない……。  あれから何も言ってこない。  言われないから、オレも何も訊けない。  塚本の中で無かった事になっているなら、オレの中でも無かったことにしなきゃ、と思って、しばらくはその話題を避けていた。  そうしたら、見事にタイミングを逃してしまった。  その所為なのか、今まで通り友達の関係が続いている。  いや、それもちょっと違うかな。  接し方は前とほとんど同じなんだけど、それが今まで通りの友達としての扱われ方なのかはかなり疑問だ。  疑問なんだけど……何が違うのかは、やっぱよく解からない。 * * *  中間試験の最終日。  さっきまでは教室で、塚本と藤堂の三人で終わったばかりの現国の答え合わせをしていた。  さすがに二回目の一年生だけあって、塚本の正解率は高い。  いや。授業サボって留年したなら、二回目とか関係はないのか。  いくら記憶力が良くても、そもそも授業を聞いていなかったら意味ないもんな。  まぁ、最近は真面目に授業に出ているから、その成果なのかもしれない。  そして今は、ガラガラの学食で少し遅めの昼食中。  藤堂は既に帰宅してしまったので、塚本と二人きりだ。  帰ってゆっくり寝たいと、という藤堂の言い分はよく分かる。  そう言えば、藤堂もあれから何も触れてこない。  頼まれもしないのに塚本の家まで連れて行って、その後が気になったりはしないのだろうか。  あそこまでお節介をしてきたんだから、訊いてきても良さそうなものだけどな。  訊かれても困るけど。  でも全く反応無しっていうのも恐い。  だからと言って、自分から言い出すのもなんだしなぁ…。  と、頭を抱えながら、ちらりと目の前に座る塚本を見た。  何度も言うが、現在二人きり。  二人でいて何かある訳じゃないんだけど、ちょっとなんか構えてしまう。  構えても本当に何も無くて、ただ疲れるだけなんだけどな。  それでも、どうしても意識してしまう。 「女が欲しー」 「うわぁぁぁっ!!」  飯も食べ終わってぼんやりしている所を、背後から何かに襲われた。  寝不足や不出来の不安よりも、試験が終わった開放感と目の前の塚本に気を取られていた所為か、後ろに誰かいるなんて全く気づかなかった。  驚いて大声で叫んだら、少ないながらも学食にいた全員の注目を集めてしまった。  でも、そんな事を気にしている場合じゃない。 「誰だよっ! 離れろー!」  両二の腕をがっちり押えられた上に、オレの肩に乗ったそいつの頭が擦り寄って髪が首を撫でるからゾクッとして気色悪い。 「だぁーれだ?」  オレが騒いでいるのを楽しむような口調。  訊いているのはこっちだ! 「知らねぇよ! 誰でもいいから離れろっ」 「当てたら離れてあげよう」  後ろの奴はそう言って更に力を強めてきた。  誰だ!? って思ったのは最初だけ。  良く考えたらこんなノリはあいつらしかいない。 「やめろよ、嫌がってんじゃん。つーか、独り占め禁止」  やたらと構ってくる二年生、三分の二。  仲井がオレの視界範囲内にいるから、後ろでくっ付いているのは安達だっ! 「なっちゃんが女だったらなぁー」  失礼な事を耳元で呟くのはヤメロ!  オレが落ち着き無く嫌がっていると、安達は結構あっさりとオレを放してくれた。  屋上での事があったから本当はかなり恐かったんだけど、こいつらに、もうそんな気は無いようだ。 「だってさぁ、やーっとテストが終わって遊べるっていうのに、女いないんじゃつまらんと思わねぇ?」 「これから夏だしな」 「そう、夏だし」  そんなどうでもいい個人的な話は、オレのいない所でやってくれ。  わざわざオレを捕まえてする話じゃないだろ。  と言うより、用が無いなら来んな! 「瀬口、こっちにおいで」  ゾワゾワする首元を撫でていると、塚本が自分の隣の椅子を叩いて言った。 「は?」  唐突に言われて、オレは首を傾げた。 「なんで?」 「いいから」  オレが訊くと、塚本はさっきよりも少し強めの口調でそう言った。  なんか、ちょっと不機嫌かも。  よく分らないけど呼ばれたので席を移動しようと立ったら、今まで死角にあったものが目に飛び込んできて固まってしまった。  今、この場所では見る筈のないもの。  セーラー服だ。  うちの生徒がふざけて女装している訳じゃない。  正真正銘、本物の女の子がいる。  校内で女の人を見るのは、入学式の父兄以外では初めて。  業者の人とかちょくちょく出入りしているらしいけど、オレは一度も見たことがないし。 「驚いてるー」  あからさまな反応をしてしまったオレを面白がるように安達が笑った。  驚くだろ、普通は。 「瀬口」  固まってしまって、席を移動しようとしていた事を忘れていたオレを急かすように塚本が呼んだ。 「一年生?」  移動して椅子に手を掛けた辺りで、セーラー服の女の子が笑いながら訊いてきた。  女の子にしては、思った程高くない声だった。  はっきりとした顔立ちから受ける印象は、気が強そう。  真っすぐにこちらを見る視線がやけに強い。 「塚本の新しいお友達」  オレが答えるより先に、安達が答えていた。  質問の答えになっていなかったけど。

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