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第40話 危機は再びやってくる -7

「で、どこまでされた?」 「は?」  優しい雰囲気が一転して、険しい表情で詰め寄られる。  その変化に付いていけなくて、何のことを訊かれているのか分らなかった。  しかも塚本は、訊いているくせに、答える間もなくオレの唇を塞いだ。  唇の次は首筋、その次は鎖骨へとキスを落していく。 「ちょっと待て、塚本!」  さっきの森谷の事が過って、頭の中がパニックになる。 「俺も、嫉妬くらいする」  塚本は顔を上げて、また唇にキスをしてきた。 「大事にしてきたのは、他の奴に抱かせる為じゃない」  唇が離れて、合った塚本の目は据わっていた。  これは…もしかしなくても、怒っているよな。  既に半分以上脱がされていて、塚本が直に身体に触れるのを阻止することはできない。  とにかく塚本を落ち着かせようとしても、オレが焦っていては上手くいく筈もない。 「怒らないから、どこに何されたか教えて」  怒らないからって、既に怒っている気がするんですけど…。  それに、例え塚本の機嫌が良かろうが、何されたかなんて口が裂けても言えない。  そんな屈辱的な事、自分の口から言えるか。  大体、そんな事を聞くなよ! 「なにも……されてない、から」  とりあえず、こう言っておけばその場がおさまると思ったオレが浅はかだった。 「庇うのか」 「違うっ! 本当に何にも……」  予定外の方向に話が逸れて、オレは慌てて否定した。  オレが森谷を庇う義理なんて全く無い。 「ここまで脱がされて、何も無かった訳がないだろ」  その予想は当っているけど、腹を撫でるのは止めてくれ。 「や……っ」  声が漏れるから、本当に止めて欲しい。  さっさとヤっておけばよかったと思ったけど、これは状況が悪すぎる。 「ちょっ……もう、ホントに……嫌だっ…て言っ……る、だろ」  混乱が振り切れて、再び涙が溢れてた。  オレがあまりにも泣くからか、塚本の動きが止まった。 「そんなに、嫌か?」  塚本の傷ついたような声がオレに突き刺さる。  「違う」って言いたいのに、上手く喋ることができない。  泣くな、って思えば思うほど涙が止まらなくなるんだよ。  塚本が嫌なんじゃない。  オレがこんなに泣くくらい不安なのは、塚本が森谷に拘っているから。 「だって…オレ、森谷に色々されて…それで…塚本来てくれたから良かったけど、でも、色んなトコ触られたし……」  自分でも何言っているのか分らなくて、言いたい事が全然出てこなくて混乱するばかりのオレは、気付いたら塚本の腕の中にいた。 「オレの事、嫌いになるだろ?」  さっきから、同じような事を訊いている気がする。  ああ、拘っているのはオレの方か。  何度「好き」と言ってもらっても、不安で仕方ない。  ただ「塚本が好き」と思っているだけ自分には、その先の展開に身体がついていかない。  そして、そんなオレを塚本がいつまでも「好き」でいてくれるとは思えない。 「何で」 「嫌じゃないか?」  不安と焦りが大きくなって、卑屈な言葉しか出てこない。  訊くと同時に、塚本の背中に回した腕に力が入る。  それと対照的に、塚本はオレの背中をポンポンと優しく叩いた。 「嫌じゃないよ」  良かった。  緊張していた身体から力が抜けるのが分る。  塚本にも触られた事の無い所まで、手を伸ばされてしまったからかなり怖かった。  前回の屋上よりも、ピンチ度は数段上だったから。 「あいつが付けた痕なら、俺が消すから」  なんか…今、凄いコトを言われた気がするんだけど。  空耳とか聞き違いじゃないよな。  てか、どうやって消すんだ? 「…ぁ……」  聞き直す間もなく、塚本の手が内腿を撫でて喉が震えた。

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