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第51話 何番目? -2

□ □ □  体育館に戻ったオレは、端でぼんやりと座っている塚本の所へ向かった。  いつもなら、オレの帰りを待って屋上で暇を潰しているんだけど、「どうせ寝てるなら手伝ってくれ」と言ったら二つ返事で来てくれた。  塚本はこういう面倒な事は苦手そうなのに、実行委員でもないのに来てくれるとは。  かなり意外だったけど、それ以上に嬉しい。  実行委員なんて面倒だけど、やる気のない塚本にツッコミをいれつつ一緒にする作業は楽しい。  手伝ってくれるって言っても、塚本だし。  無理しない程度だけど。  少し目を離すと、邪魔にならない所で休憩中なのは大体予想していた。  期待を裏切らない奴だなぁ、と苦笑したオレを見上げた塚本が、何かに気付いたように口を開く。 「何かあった?」  ぼーっとしているくせに、こういう所は鋭い。  塚本は、オレのちょっとした変化に気付くのが上手い。  それはつまり、ツボを押えるのも上手いって事だ。  いきなり訊かれて返答に困る。  別に。  と言える程、時間は経ってなかった。 「吉岡さんって知ってる?」 「……吉岡」  少し考えるように塚本が呟く。 「うん。今、二年生だから、去年は塚本と同級生だっだろ?」  と訊いても、塚本に反応は無し。 「憶えてない?」 「いや、憶えてるよ」  学年全員の顔と名前を憶える必要もないし、塚本ならきっとぼーっとしているから知らなくても仕方無いかな、と思ったら、意外にも憶えていたらしい。  もしかしたら、クラスが一緒だったのかな?  それなら、塚本が憶えていても不思議じゃない。 「吉岡が、どうかした?」  言葉を選んで答えようと思ったけど、選ぼうにもそんなに選択肢は多くなかった。  こういう事って、なんとなく言いにくいんだよな。 「……嫌われてるっぽい」  塚本の隣りに座って、少し小さな声で言った。 「ぽい」  不確定な言い方だったからか、どうでもいい所を復唱された。  面と向かって言われた訳じゃないんだから、仕方ないだろ。 「分らないけど、なんとなく」  言ってから、やっぱ言わなきゃよかったと後悔した。  「なんとなく」な次元じゃないと確信しているけど、その程度のことだったから。 「何で?」 「だから分らないんだって。最初っから、一方的に、ずっと」  自分でもどうしてなのかなんて分らないのに、人に説明できる訳がない。  それに、誰かを好きになるのと同じで、嫌うのにも理由なんて無いのかもしれない。  当事者としては、多少理不尽だとは思うけど。 「困ってる?」  塚本が、覗き込むようにこちらを見て訊いてきた。  心配してくれているのかな? 「と言うか、感じ悪い」  拗ねたように言ったオレの頭を優しい手が撫でる。  単純なオレは、それだけの事で気分が浮上してしまう。  体育館には人がたくさんいて人目があるから、オレと塚本の間には触れるか触れないかの間がある。  そういうギリギリの距離って、結構嫌いじゃない。  色々なことがあっても、大雑把に「平和だなぁ」と思える。  隣に好きな人がいて、その好きな人もオレのこと好きって言ってくれて。  オレはドキドキしすぎて困っていて。  それってやっぱ平和だよな。 「うわっ!」  そんな時に、誰かの驚きのような声が聞こえた。  誰に向けられたものなのかすぐには分らなかったけど、オレが反応するには十分な音量と内容だった。 「本当にマサくんだ。一瞬幻覚かと思った」  声の主らしい生徒は三年生のようで、セリフ同様に驚いたようにこっちを見ていた。

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