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第100話 3パーセントの誘惑 -1
誠人の自室である離れに足を踏み入れて、しばし考える。
この部屋の主である誠人とは、塚本家の門を潜るまでは一緒だったが、一度母屋に寄ると言い、現在は別行動中だ。
そんな訳で、預かった鍵で玄関を開けて、先に上がらせてもらっている。
部屋の明かりを点けて、やけに広く感じる室内の入り口で立ち尽くす。
今まで無人だった室内はひんやりと冷えていた。
エアコンのスイッチを入れて、とりあえずこの空間を温めることにする。
それから、畳の部屋の中央に置かれててる卓袱台の横に座ってみた。
……。
…………。
落ち着かない。
全く落ち着かない。
この部屋に一人でいる事もだけど、それ以上に、誠人を「待っている」というこの状態が。
「今日は最後まで」と言われて部屋にやって来た時点で、言葉通りになるのは確実だろう。
なんなら、オレも割とそういう気分ではある。
しかし!
こうして一人で待っていなければならないこの状況!
何かして待っていた方が良いのかな?
服、脱いでた方がいい?
シャワーとか勝手に使っても大丈夫か?
誠人が寝室にしている、隣の部屋にお布団……は常時敷いてあるっぽいからいいか。
だったら、居間じゃなくて寝室で待っているべき?
そもそも、誠人の言う「最後まで」がオレの考えている行為と同じなのだろうか。
違う可能性もある、よな。
あの会話の流れで言い出すのは不自然だ。
だけど、じゃあ何なのか、というと何も思いつかない。
あれこれ考えすぎて、頭が壊れそうだ。
別に初めてじゃないのに、この混乱はいつもやってくる。
初めてじゃないからこそ、誠人の表情とか、肌に触れてくる手や舌の感触とか、身体の中を蠢く刺激を思い出してしまってどうにもならない。
妙な事を考えたから、心拍数が上がって喉が渇いてきた。
何か飲んで待っていて、とか何とか言っていた気がするし、お言葉に甘えて冷蔵庫の中を漁らせて頂くことにしよう。
「……?」
あまり使われてはない台所の端に鎮座する冷蔵庫の扉を開けて、あまり馴染みの無い缶ジュースを見つけた。
冷蔵庫の中はガラガラで、基本的に飲み物しか入っていない。
ペットボトルの水と炭酸のジュース、それとその缶ジュースだ。
パッケージにはグレープフルーツのイラスト。
果肉が入っているっぽい説明が書いてあって、ちょっとおいしそう。
ただの水でも良かったんだけど、さっぱり系のジュースもいいよな。
と、冷蔵庫から取り出して、プルトップを開けて遠慮なく口を付けた。
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