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《番外》ナツには夏の誘い方 -2
□ □ □
「ふー……」
と、一息ついて天井を仰いだ。
手土産に持ってきた棒付きアイス片手に、横に座る誠人に寄りかる。
エアコンの効いた部屋で、風呂上りのさっぱり感に包まれて食べるアイスは格別だ。
みかんの果肉がゴロゴロ入っていて、アイスというより、冷凍みかんだな。
冷たくて美味い。
シャリシャリと食べていると、何となく視線を感じたので誠人を見た。
オレと同じアイスを片手に持ったまま、こちらを見ている。
「早く食べないと溶けるぞ」
心配になって忠告したけど、既に液体となったアイスは棒を伝い、指に届こうとしていた。
「ほら」
思わず、手ではなくて口が出ていた。
アイスの棒と指の境目を舐めて、手がべたつくのを阻止してやった。
勢いで誠人の指にも舌と唇が当たって、何だか誠人の指が甘いような錯覚に陥る。
アイスって、冷たい時より溶けた時の方が甘い気がする。
気分かな。
「身体、大丈夫?」
不意に訊かれて、おもむろに顔を上げた。
探るような目と目が合う。
このタイミングで訊くな!
冷蔵庫前から寝室に運ばれて、性急に服を脱がされ、じっくり慣らされて、ぐちゃぐちゃにされた中に出されたのが、走馬燈のように脳内を駆け巡る。
最中のオレは語彙力が著しく低下するから、「もうヤだ」と「気持ちイイ」が交互に押し寄せて、拒んだり強請ったりと手が付けられないくらい誠人を困らせてしまう。
互いに果てた時にはもうヘトヘトで、体力の無さを思い知らされる。
「大丈夫、です」
ゆっくり身体を起こして、若干距離を取るように誠人に寄り掛かるのをやめた。
今、触れたら、ちょっと危険な予感がする。
「じゃあ、それ食べ終わったら、またしてもいい?」
「え!?」
すっと目を細めて微笑む誠人を見て、予感は的中したと確信する。
「大丈夫」と言ったのは社交辞令だ。
本当は、こうして座っているのも怠いし、受け入れた箇所もまだ疼いている。
そこを触られたら、いやが応もなくなる。
今日はもう終わりだと思い込んでいたから、それは少し衝撃的だった。
別に嫌ではないのだけれど……、と思案しながらアイスを舐める。
表面が溶けていて、ジュースのようだ。
アイスはこんなに冷たいのに、顔はどんどん火照ってきてどうにもならない。
返事もできないでいると、ふっと耳に吐息がかかった。
「わっ!」
びくりと肩を上下させて声を上げてしまう。
むやみやたらにそういう事をするな!
動悸が激しくなるだろ!
「瀬口に、誘われたから」
そして、この発言。
意味が分からない。
オレが、いつ誘ったと?
「いつ!?」
「割と、ずっと」
……そうかな?
むしろ、オレとしては誠人に誘われている気がしてならないけど。
今も。
冷蔵庫前の時も。
お前がそういう気分なのが駄々漏れで、オレはそれに引っ張られてドキドキする事が圧倒的に多いと思う。
それを「誘っている」と誠人が捉えるなら、そうなんだろうけど。
何にしても、オレの拙い欲情をこんなにも拾ってくれるのは誠人くらいだろう。
見透かされているというより、分かってくれている、と感謝すべきなのかな。
本格的に溶けだしたアイスを齧って飲み込む。
誠人の言う「また」までのタイムリミットは、そう長く持ちそうもない。
あと数分、数十秒。
カウントダウンをしながら、また一口齧った。
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