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《番外》「と、いう夢を見た」赤い糸編 -4
学校で! 保健室で!
カーテンが引かれて個室のようになっているとは言え、公共の場と言っても過言ではない所だぞ!
大体、カーテンのすぐ向こうには保健室の先生がいるだろっ。
「誰もいないよ」
心の声を聞かれたらしく、オレの中心を緩く握る誠人が「職員会議で暫く戻ってこない」と教えてくれる。
先生がいないのは良かったけど、そういう問題じゃねぇよ!
「鍵も、掛けてある」
誠人は、オレを握る手を上下に動かしながら耳元で囁いた。
用意周到すぎる。
刺激されて熱くなった身体も含めて、拒む要素が無い。
「あ……っ」
絡められた手に強めに扱かれると声が零れてしまい、慌てて顔を誠人の胸元に押し付けた。
いくら先生がいないからといっても、校内でこんな事をしている羞恥心はある。
オレがぎゅっと抱きつくのを待っていたかのように、柔らかいとは言えないベッドに押し倒された。
「ま、誠人……っ!」
ジャージと一緒に下着も脚から引き抜かれたかと思ったら、割開かれた脚の間に誠人の頭が見えた。
「やっ、あ、あぁ」
反応し始めていたそこに、誠人の唇が這う。
それは気持ち良すぎてダメだ。
ここがどこかなんて、どうでもよくなってしまう。
「あまり大きな声出すと、外に聞こえるかも」
そんな意地悪な事を言って、誠人はゆっくりとオレの中心を口に含んでいった。
だったら、ここですんなよ! と言う余裕なんて当然無い。
オレは両手で口を覆って、漏れる声を押し戻す事に必死だった。
「んん、んっ、はっ……んぁ」
後ろを探っていた誠人の指が、いつの間にか中に入って解されている。
どこをどうしたらオレが善がるのかなんて知り尽くしている誠人には、何もをしても敵わない。
ねっとりと絡みついたかと思ったら、強く吸われて息が止まる。
簡単に、限界間近まで引き摺り出されてしまう。
「い、いく、からっ、ぁ!」
口を離して欲しい、と言葉を紡ぐ余裕はない。
誠人の頭を掴んで引き離そうにも、手は口を覆うので忙しい。
オレが咽び泣くのを嘲笑うかのような、前と後ろを責める巧みな口と指によって呆気なく達してしまった。
「はっ……、あぁっ!」
荒くなった呼吸の中で、誠人の口腔から自身が解放されたのを感じていたのも束の間。
熱を放った余韻に浸る間も無く、未だ中に入ったままの誠人の指が動いて身体が跳ねた。
「ここ、挿れてもいい?」
指で広げながら甘い声で囁くのは、きっと悪魔だ。
だって、ぐしゃぐしゃになったオレの顔を嬉しそうに見降ろしている。
「や……声、我慢できな、ひっ!」
言い終わるより先に、ぐりっと中を擦られて悲鳴を上げた。
フェラでも抑えきれなかったのに、挿れられて突かれたら声を我慢するという思考すらなくなってしまう。
「かっ、帰ってから、帰ってしよ?」
脚を持ち上げられて声が上擦る。
こいつを止めるのはもう無理だと知っていても、説得をせずにはいられない。
指で解された箇所に硬いものを押し当てられて、「オレも口でする」という提案は喉の奥で止まってしまった。
「帰ってからも、しような?」
そーじゃなくて!
という抗議の声は、圧迫感に押し潰された。
「あ、あっ、んんっ、ん……ぐっ」
咄嗟に腕で顔を覆った。
それでも声は抑えられなくて、ジャージを咥えて耐えていた。
ジャージを着ていて良かった。
体操着だけだったら、自分の腕を噛んでいた所だ。
「瀬口」
ニチニチと押し込まれる動きが止まったかと思ったら、誠人に優しく呼ばれた。
「まだ動かないから、顔見せて」
顔を覆う腕を掴まれて、到底無理なお願いをされた。
声は優しいのに、言ってる事は鬼だ。
ダメだって。
これがないと、めちゃめちゃ声が出ちゃうから。
というか、これから必要になるんだから。
誠人だって知ってるクセに。
「ふ……っ、は」
だけど……少しくらいなら。
そろ、と腕の力を抜いて自分を貫く男と視線を合わせる。
誠人の顔は見たいけど、自分を見られるのは嫌だ。
見ないで、と思うのに、こうしている時に余所見されているのは嫌で。
優しく微笑まれるのも好きだけど、溶かされそうに熱い視線を向けられるのも好きだ。
「本当に可愛い」
うっとりとしたような誠人の声も、オレの性感帯の刺激になる。
こんなに情けないオレを見て、満足そうに笑ってそんな事を言ってくれるのは、世界中探してもこいつだけだ。
髪を撫でて、頬を撫でて、唇をなぞる。
その全てが優しくて、愛しくて、泣きそうになる。
「……く、ない」
「可愛いよ」
ぶんぶんと首を横に振って否定する。
嬉しいのに、素直に受け取れないオレは、どう考えても可愛い訳がない。
「ずっ……と、一緒にいて、とか、どこにも行かないで、とか……重いだろ」
まるで束縛するような願い。
誠人にも自由があるのに、オレはきっと尊重してやれない。
誠人以外なんて知らない。
「他の誰か」なんて知りたくもない。
「それ、可愛いだけだから」
誠人は、オレの重い発言を聞いて少し驚いたようだったけど、すぐに楽しそうな色を浮かべた。
何故か上機嫌な様子の誠人は、そう言ってオレの腕を掴む手に力を入れた。
「いっ! ……はっ、ああっ!」
腕を持たれたかと思ったら、ぐいっと引っ張られて身体が誠人の腿に乗ってしまった。
重力に従って深く突きさされ、言いようのない快感のような電流が全身を走る。
「や、ぁ、ぁ、はっ……ぁんん」
向かい合う誠人に絡まるように抱きついて、自重で奥へと進むのを止めようとするけど、もがいて締めて自分が辛くなるだけだ。
しかも、誠人は人の尻を掴んで、更に奥へと挿ってこようとしている。
ただでさえ、この体位は頭が変になるから今はダメなのに。
もうこれ以上は無理なのに、ジワジワと進んでいるような気がして震える。
そんなに奥まで挿られてしまったら、オレの身体はおかしくなってしまう。
「誠人、あぁぁ……ふか、いぃ」
「ん、気持ち良いよ」
助けて欲しくて誠人の服を掴んでも、何一つ伝わっていない。
それどころか、顔中に与えられるキスと、熱を帯びた声が耳に響いて更に追い詰められる。
それはズルイぞ。
お前のその声には、オレが溶ける作用があるんだから。
「は……ふ、あ、んん」
どちからからともなく重ねた唇から溶けていく。
長いキスをしている間に、ゆさゆさと身体が動く。
あまり新しくはない備品のベッドがギッギッという音を鳴らすのも、次第に気にならなくなる。
身体が馴染んでしまったら、もう気持ち良いことしか追えなくて、穿つ熱い塊が弾けるのを待ち焦がれて瞼を落とした。
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