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第2話

 などと、言われてしまうのだろうか。 司はふっ、と諦めたように笑う。  何度となく考えてきた状況だ。現実の正平はそんな素振りを見せたことはないが、もしかしたら本心ではそう思っているのではないかという疑念が、司の胸を締め付ける。  だが、もしそうなったとしたら、愛する正平の門出は祝ってやらねばならない。じんわりと涙が滲んだが、気にしてはいけない。女々しく縋るなど、論外だ。  悶々としているうちに、インターフォンが鳴る。玄関を開けると、そこにはいつもより気合の入ったスーツを着た正平の姿がそこにあった。やや長身の部類に入ること、幼い頃習っていた剣道の賜物か姿勢が良く、紺色の装束は非常によく似合っていた。普段仕事で身にまとっているものよりも、華やかなスーツだというのに、髪型は普段どおり。もう少し髪型にも気を配れば、より男前に見えるというのに、何と勿体ないことをしているのだろうかと司は思った。ただ、同時に、男前に見せる必要がなかったいう正平の意志を嬉しくも思った。  右手に大きな白い紙袋を持っていたことから、自宅には寄らず会場からそのままここに来たのだろう。扉を閉め、二人の距離が近くなると、司の鼻腔を擽るほのかなアルコールの匂い。対して強くもないくせに、吞んだのか。顔色を見れば、一目瞭然。ほんのりと朱が差している。付き合わざるを得ない状況だったのだろう。 「二次会行くって言ってたからさ、今日は来ないと思ってた」  努めて平静を装ったつもりだったが、声が若干震えてしまったかもしれない。だが、相手は多少とはいえ、酒が入っているのだから、どうせ気が付かないだろう。そう思うことにした。 「二次会は途中で抜けてきた」 「いいのか。久しぶりに会う奴がいたんじゃないのか」  あまりにもいつもと変わらない調子に安心するが、司は探ってしまう。疑ってしまう。  大学時代の同級生ということであれば、遠方に行ってしまった友人もいることだろう。滅多に会えない相手もいるはずだ。新郎の友人は何も男ばかりとは限らない。それこそ、学生時代の彼女が、その場にいる可能性もゼロではない。 「お前に会いたくなったから」 「は……?」  正平の口から出たのは、司の不安を晴らす言葉だった。その視線は、司を捉えて離さない。あまりの真剣さに、司の方が及び腰になってしまう。

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