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第4話

もう、顔がひどい有様になっていることは正平の目にも明らかだろう。だからもう、取り繕う必要はない。 「まったく考えなかったわけじゃない」 「あのなあ、俺は確かに根っからのゲイってわけじゃない。だから、軽い気持ちでお前に靡いたわけじゃねぇし、遊びでお前と付き合うわけないんだ」 「……そうだよな、悪い」 未だに正平を信じることができないでいる自分が情けなくて、司は俯いた。これはこれで、幻滅されてしまうのかもしれない。 「でも、話してくれて、ありがとうな」 思わず顔を上げてしまう。何故、礼を言われたのか。司は理解ができなかった。 「言われなかったら、司の不安に気付かないままだったと思う。何が不安かわかってないのに、信じてくれなんて虫が良すぎるだろ」 ニカッと笑った正平の笑顔が眩しくて、司は顔を背けてしまう。出会ったのが十数年前、空白の数年間があったはずなのに、変わらない笑顔。 思えば、高校生の頃からこの笑顔に弱かった。 「俺が、一人で勝手に考えてただけだから」 「不安に思うのは、当たり前だ。俺だって、お前がどっか行くんじゃないかって、不安になることはある」 「それは……」 司は、ないとは言えなかった。それは、他に目移りするという話ではない。正平を信じることに疲れてしまった時、そうならないとは言い切れない。愛しているからこそ、恐ろしい。愛しい男から、誰かの因子を感じてしまったとき、耐えられるのだろうか。これが、男女であれば、愛は消えようとも繋がりを保ち続けることは、可能だが、同性ではそうもいかない。 「でも、それは、男同士だからってわけじゃないぞ。男女間でもあることだ。だから、不安に感じることがあれば、言ってくれよ」

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