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第6話

 司が住んでいる部屋の風呂は狭く、成人男性が二人入るスペースはない。だから、待ってもらうしかない。正平は大人しくベッドに座り、司は風呂場へと向かった。  司は準備を済ませ、風呂から出る。先程まで着ていた部屋着に視線を移す。どうせ脱ぐのだから着る必要はないが、何も身に着けずに正平の元へ向かうのは気が引けた。ないよりはましかと思い、白いバスタオルを巻いて脱衣所を後にすると、衝撃的な事実を目にする。 「嘘だろ」  ベッドにスーツのまま横たわる正平の姿。近寄り、聞こえてきた寝息に愕然とする。 いや、仕方がない。結婚式、二次会、疲れているのだろう理解はできる。 司も、以前友人の結婚式に出席した時、げんなりとしたのを覚えている。肉体的というよりは、精神的に。特に二次会なんてものは、最悪だ。新婦の友人、新郎の友人入り乱れての会話。キラキラとめかし込んだ女性陣からのギラギラした視線。それを楽しいと感じる人間もいると思うが、少なくとも自分はそういう部類には属さない。 いや、そんなことはこの際どうでもいいのだ。  はあ、とついたため息には、熱がこもっていた。 すっかり愛されることを覚えた肉体は、切なさを訴えるばかりである。どれだけ取り繕っても、誤魔化しきれない。 特に、自ら慣らした場所など、物欲しげに疼いて、仕方がない。 寝かせてやるべきなんだ。司は自分に言い聞かせる。どうせ、この男は明日までいるつもりなんだ。なら、明日だって。 ――最近は、お互いに立て込んでいて、触れ合う回数が少なかったから。もう、待てない。―― ――馬鹿か。寝ている相手叩き起こして、やることではない。幻滅されてしまうかもしれない。――  天使と悪魔のささやきが、司に葛藤を呼び起こす。どうすればいい。理性と本能、どちらに従えばいいのか。幻滅されたくない、しかし欲を満たしたい。  寝入った男が憎らしい。起きる気配などまるでない。  そこで、名案が浮かんでしまう。

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