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第7話
――寝ている間にコトを済ませてしまえばいいのではないか?――
いや、名案であるはずがない。本人の同意もなく、そんなことができるか。ただ、司は聖人君主ではない。欲望の前では、魂を売ってしまうこともある。
ファスナーを下ろす音とは、こんなにも響くものだったろうか。音を立てたくないというのに、起きてしまったら、いや、本当は起きて欲しいところのはずだったのに。今、目覚められたら、羞恥心で死んでしまうだろう。
無機質な音を立て、ファスナーを下ろしきる。
まだ、起きない。
ホックに手をかけ、ゆっくりとズボンを引き下げる。さらに下着をかき分け、体格の差ゆえか、平常時であっても、主張が強いように感じるそれに触れる。当然、このままでは、司が満たされることはない。
どうせ誰も見ていないのだ。何を恥じることがあろうか。
置いている部屋着に着替えることなく、寝入ってしまった相手に邪な感情を抱くことに罪悪感を覚えつつも、欲を抑えきれないのは、わざわざ持ってきた潤滑剤と正方形の小袋の存在から明白だ。
「ん……」
品のない水音と荒くなる自身の呼吸に、どうしようもなく羞恥心を掻き立てられる。特に無抵抗の相手の、それを口に含むなどという変態的な行為を、自らの意思でしているのだから、余計に。
何も初めてと言うわけではない。だから、どうすればいいかなんて、分かりきっている。同性だから、というのも勿論あるだろうが。
この行為の時は、いつも正平が司の頭を撫でてくれる。しかし、意識のない今日は、当然それはない。ただ、同じように咥内で脈打つそれが、あっという間に張りつめ、臨戦態勢になる。その様すら愛おしいと感じる自分自身に、司は自嘲する。いくらなんでも盲目すぎるのではないかと思いつつ、口に収まらない凶器ともいえるそれを、手で支えるが、その熱にまた、身を震わせる。正確に言えば、身体の奥。
血管が浮き出たそれは、先端から先走りを滲ませている。開放寸前である様を見て、司は思わず息をのむ。生殺与奪などという表現は大げさだが、物理的にも意味合いとしても、掌中に収めている状況である。
再び口に咥え、今にも溢れてしまいそうな猛りを飲み干すか。それとも……。
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