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第9話

 司は自らの情けない嬌声を聞くのが嫌で、口元を抑えながら、何とか自重で、長大なそれを奥へと入り込ませる。  挿入は自分主導だったために、馴染ませながら無理なく、行うことができた。だから、衝撃は少ない。浅い息を吐きながら、ゆっくりとその存在を甘受する。  確かに今、この身を穿つ剛直が、収まっている。 たが、いつもと違う。もっと、我を忘れるような刺激を、知っているのに。もっと、かき混ぜて欲しい。もっとすりつぶして欲しい。一番弱いところを掠めるだけの状況は、生殺しだ。何とか、自分が悦に入るところに、それを当てようとはするのだが、もどかしい刺激にしか繋がらない。  口元を抑えていた手を、正平の腹に置き、たどたどしい動きで腰を上下させる。だが、それでもやはり足りない。いつものように、突き上げるような勢いがなければ、絶頂を迎えることなど、とても。  そう思ったその時、ふいに腰を掴まれ、望んでいた刺激が与えられた。 「か、はっ……」  何で、どうして、分からない。気持ちいい。気持ちいい。  脳天を突き抜ける快楽に、状況が理解できない。その衝撃は一度だけでは終わらず、絶え間なく司に襲い掛かる。思わず、体が傾き、正平の腹に置いた自らの手が視界に入る。この手の置き方は、と考える間もなく揺さぶられる。 「三つ指ついてるみてぇ、だな」 「なっ……正平?」 「俺が寝てる間、随分お楽しみだったな!」  弱いところを、勢い良く突かれ、司の口から情けない声が上がる。肉と肉がぶつかる音が、聴覚を支配する。それまでの緩慢な動きとは違い、確実に胎内を抉られ、ひんひんと涙を流すだけの生き物に成り下がる。肉の縁と肉棒の境目は泡立ち、その交わりの深さを物語っている。 「だって、我慢、できなかった」 「一人でおっぱじめるなんて、そんなに欲しかったのかよ。これが」  尻にざりざりとした感触。陰毛が当たるほどの深い交わり。もはや、司には胎の奥を穿つそれのことしか考えられなかった。

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