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 深夜、マンションの一室の玄関を開けて青年を迎え入れたのは、年の頃の変わらぬ彼の友人だった。 「アルル、おかえり」  友人は暖かな部屋の灯りを背に受けてそう言った。逆光で透けそうな明るい髪と白い肌をした細身の彼は、どこか気弱そうな笑みを浮かべていた。 「ただいま。今日もお腹いっぱーい」  そう言いながら部屋に入ったアルルの後を追いながら、友は言う。 「今日は、洗濯も掃除も買い物もできたよ」 「リーネえらーいありがとー。……じゃあもしかしなくてもすごくお腹空いてる?」  友人──リーネはアルルに顔を覗き込まれて、眉を下げながら頷いた。アルルはにこりと笑って、リーネの腕を引く。 「そんじゃ頑張ったリーネちゃんにご飯のじかーん。はい、ソファに四つん這いになって」  リーネが素直にソファの上に乗ると、アルルは躊躇なくリーネのズボンを下着ごと引き下ろした。居間の灯りの下に、真っ白な尻が露わになる。  その中心で小さく閉じている穴をつつくと、それだけで透明な蜜が滲み出してきた。そこに人差し指を差し込めば、リーネの高い声が短く漏れる。 「ふふっ、こんなに可愛くて濡れやすいのに、まだ自分でご飯食べられないなんてかわいそう」  そう言いながらアルルは己のペニスを取り出してしごく。すぐに硬くなったそれを、アルルは遠慮もなくリーネの穴に突き入れた。 「あっあぁんっ!」 「はい、リーネちゃんいい子にしてねー。僕のおちんちんが気持ちよくなったら美味しいの中に出してあげるからねー」  アルルが腰を前後させ始めると、リーネの中からはとろとろと蜜が溢れ出して濡れた音を立てた。 「リーネのお尻すぐびちょびちょになるのやらしーなー。自分でご飯食べられるようになったら、ローションだってうまく言い訳しなきゃだめだよ?」 「あっあっ、アルルっ激しいよぉっ」 「だってリーネお腹空いてるでしょ? 僕今日もお尻でいっぱい気持ちよくなったから、いっぱい擦らないと出せないもん」 「あっやぁんっ……!」 「リーネは顔もお尻も声も可愛いんだから、自分でご飯食べに行けばいいのに。いっそハッテン場で種壺になっちゃう? みんな喜んで出してくれるよ」 「だめっ……そんなの怖いよぉ……っ!」 「そんなに怖がらなくても人間の男なんてこんなえっちなお尻にハメたら腰振るしかできなくなっちゃうのに……。あーリーネの締め方やらしい……気持ちいいぃ……」  アルルはうっとりと目を細めてリーネの尻を突き続ける。一方リーネはソファにしがみつくようにしてピストンに耐えていた。 「あっ出るっ……リーネ、奥に出してあげるからね……!」  パンパンと腰を打ち付けて、アルルは息を詰めるとリーネの中に精を吐き出した。それと同時に、リーネは感極まったような声を出す。 「あっすごいっ……濃いよぉ……!」  背中を反らせてぶるぶると震えて、リーネは腰を揺らめかせた。そのいやらしい動きにアルルは微笑んで、繋がったまま息を弾ませて言う。 「でしょ? 今日は4回も中出ししてもらっちゃった。常連さんがすっごく濃いの出してくれて美味しかったぁ……」 「4回……? すごい……」 「おちんちんから直接中に精子出してもらうの、最高なんだから。リーネも怖がってないでお腹いっぱい食べたらいいんだよ……」  満足そうに言いながら、アルルはリーネの中からペニスを引き抜く。ぐっしょりと濡れた尻を愛しげに眺めて、白い肌に軽いキスをした。 「こんなにご馳走がいっぱいの街に住んでて、まだ一口も食べさせてもらえないなんてこのお尻がかわいそう……リーネももう大人の淫魔なんだから……」  ソファの上でぜえぜえと息をついていたリーネは、切なそうに呟いた。 「俺だって……美味しそうだなって思うけど、人間とえっちするの怖いんだもん……」 「だーかーらー、ご馳走怖がってどうするのさ。僕の知ってる人なら大丈夫に決まってるのに」 「あ、アルルは知ってても、俺にとっては知らない人じゃん」  はあ、とアルルはため息をつく。この人見知りを通り越して人間恐怖症じみた友人は、自分と同じ淫魔でありながら、まだ一度も人間から直接精を摂ったことがなかった。  今のように、人間から食事をした淫魔を介して精を摂取するのは、子どもや病人の食事の仕方だ。成人した淫魔は普通、勧められるまでもなく食欲と性欲に従って、人間と交わり腹を満たす。それなのに、リーネはそれがどうしてもできずにいた。 「もう……僕はリーネに食べさせてあげるのは全然いいけど、もっと美味しくて栄養があるご飯があるんだから食べてほしいよ……」 「ごめん……」 「謝んなくていいから、リーネが怖くないって思える人はちゃんと探してね。せっかく可愛くて綺麗なのに、このまましわしわになったらやだよ」  うん、と頷きながら、リーネは友人の目を真っ直ぐには見られなかった。

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