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「りいねは今お腹が空いてて、俺に中出しされたいっていう理解でいい?」  息がかかるほどの距離で靖満にそう言われて、リーネは緊張のあまり呼吸も満足にできなかった。  それでも淫魔の本能が、靖満の精を求めてやまなくて、下着の濡れる感触にいっそういたたまれない気持ちになる。  とても靖満を見返すことはできなくて顔を背けると、服で懸命に隠していたペニスに触れられて裏返った声が出た。 「えっ、えっえっ何……!」 「ガチガチじゃん。……これ、尻に挿れられたくてこうなってるの?」 「だ、だから俺お腹空いてて……!」 「うん、さっきも同じこと訊いたけど、中出しされたいの、りいねは?」  布の上からやんわりとペニスを撫でられながら再度問われて、リーネは観念して頷いた。靖満が美味しそうで、空腹が切なくて、そして初めての距離感に頭が麻痺してしまいそうだった。 「……じゃあ、ベッド行こ」  靖満に腕を引かれて、リーネは震える足で立ち上がった。食べるのか食べられるのかわからなくて混乱しながら、抵抗もできずに寝室のベッドまで連れて行かれる。  シーツの上に座らされて、両肩をつかまれて、リーネは心臓がうるさくて耳鳴りがしそうだった。それなのに、靖満は表情も変えずに顔を近付けてくる。 「なんだろ……なんかすごいいい匂いすんだけど、なんかつけてる?」 「な、な、何もつけてな……た、たぶん淫魔だから……」 「だから?」 「人間をその気にさせる匂いが……するんだと……」  もう自分でも何を言っているのかよくわからなかった。このまま本当に靖満に犯されるのかと考えようとしても、何もかも現実味がなかった。 「……ほんとに、ヤッてもいいの」  低い声で問いかけられて、リーネは息を飲む。何と返事をすればいいのかわからずにいると、両手で顔を上げさせられた。 「嫌がってくれないなら、俺も我慢する理由なくなんだけど」  その言葉を理解するのに数瞬を要して、それからようやくリーネは靖満の目に欲情が浮いているのを認める。幾度も人間の男から向けられて、けれども一度として受け入れられなかったそれだった。  リーネは怖いほどに緊張していたが、まるで腰が砕けてしまったように座り込んだまま、逃げようという気は皆目起きなかった。 「……あっ」  服の中に靖満の手が入り込んできて、素肌を腹から胸まで撫で上げられた。それだけのことにひどく身体が熱くなって、リーネはたまらずに目を伏せる。 「……なにそのえっろい顔」  ぼそりと呟かれたが、自分がどんな顔をしているかなどわかるはずもなかった。靖満に上半身を撫で回されて、ますます下着が濡れていくのだけがはっきりと感じられてたまらなくなる。ふと靖満の熱い息がかかって目を上げると、驚くほど近くで目が合ってしまった。 「キスは? してもいい?」  なんでそんなことを訊かれるのかわからないまま、ほとんど無意識にリーネは頷いた。すると躊躇もなく靖満の唇が口を塞いできて、その知らない温度と感触に一瞬頭の中が白くなる。 「ン……」  抱きすくめられて苦しくなって口を開くと、靖満の舌と一緒に唾液が口腔に入り込んできて、リーネは自分の中の何かが麻痺するのを感じた。  空腹に染み渡るような人間の男の味に、本能が飛びついて、リーネは気が付くと靖満の身体にすがりついていた。 「……あんた、りいね、そんなされたら、止まんなくなるんだけど……」  そんな、が何を指しているのかわからずにいると、抱き合ったまま押し倒されて、痛いほどに勃起したペニスに、同じほどの硬さのものを擦り付けられた。何を考えるより先にそれが欲しい気持ちが湧き出て、腰を押し付けると、靖満の笑う気配がした。  恥ずかしいという気持ちも経験したことのない接触への恐れも、空腹と興奮に押しやられて、リーネは靖満の服をつかんだまま離せなくなる。早く欲しいと訴える方法もわからずじれったさに身を苛まれていると、靖満の熱い手に手首をつかまれた。 「そんなしがみつかれたら脱がせらんねーから……」  脱がせてくれるのか、と思うと胸が震えた。服などもう邪魔なばかりで、おとなしく両手を離すと、靖満もまた了解しているかのように、下着ごとズボンを引き下ろされて、ペニスが音を立てて下腹を打った。

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