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リーネの中で靖満のそれはどくどくと脈打っていて、熱くて、ついさっき精を浴びたばかりのリーネの内側はそれを感じるだけで震えてしまった。
リーネが戸惑って靖満を見上げると、靖満は再び熱を帯びた目でリーネを見下ろしていた。
「悪いけど……」
そう言って、靖満はリーネの手を取って指を絡めながらシーツの上に押し付けた。それがどういう意味なのか理解するにはあまりに経験が足りなくて、リーネはただ靖満を見返す。
「もう一回りいねのこと泣かさせて。……俺の精子のためなら、お尻気持ちいいの我慢するって言ったもんな」
え、とリーネが声を漏らすとほとんど同時に、靖満の腰が引かれて、そして強く局部に打ち付けられた。
「っきゃあん!」
リーネの悲鳴に靖満は微笑んで、ばちゅばちゅと激しい音を立て始める。リーネはたまらずに逃れようとしたが、手を絡め取られながら腰を貫かれていては逃れようもなかった。
「あっやんっやぁんっ靖満さんっ! あっやっはげしっ……やああん!」
拒もうとする声が鼻にかかってひどく甘いのが自分でもわかって、リーネは恥ずかしさで余計に追い詰められてしまう。そんなリーネを見つめながら、靖満は荒い息の下から満足げな声で言った。
「りいね、俺といたらこのめちゃくちゃ可愛い尻、もっと犯されていじめられるってちゃんと覚悟してうちに来なね。来たら、もう俺、りいねの身体俺だけのもんにするから……」
* * *
靖満の家は、アルルの部屋からたった二駅先のマンションだった。
モノトーンに紺や茶やベージュの交じった、靖満自身のイメージを裏切らないインテリアは、明るい色の多かったアルルの部屋とはまったく違う空間で、リーネはそわそわと落ち着かなかった。知らない部屋のはずなのに、靖満の匂いと気配が満ちていて、居るだけで胸が甘く痺れるようだった。
引越しとは呼べない程度のささやかな荷物を運び終えると、リーネはぎこちなく頭を下げた。
「あの……これからよろしくお願いします」
こっちこそ、と言ってはにかんだ靖満と、まだ下を向いてもじもじとしているリーネを交互に見て、アルルは大仰にため息をついた。
「もー、二人の世界になるの早いよぉ。そういうの僕が帰ってからでいいんじゃない?」
「ご、ごめん」
リーネは謝ったが、それでも靖満のことが気になって仕方なかった。台所には見たこともない調理道具が並んでいたし、ここにいれば靖満の料理をする姿も見られるのかと思うと、夢の中にいるような心地だった。
「あーあ、リーネがそんなめろめろになっちゃってどうするのさ。靖満サン、この子ほんとに人間慣れしてないから、おかしなことしてもあんまり叱らないでね?」
「あ、アルル」
恥ずかしくなってリーネは友人の袖を引く。アルルはリーネを見もせずに言った。
「あと、これ僕のお店の名刺。僕みたいなのがタイプのお友達がいたら紹介して。靖満サンのお友達だったら美味しそうだし……、何なら靖満サンが遊びに来てくれてもいいよ」
にっこりと愛らしく笑うアルルに、リーネは慌てて声を上げた。
「やっ靖満さんはダメっ!」
言ってから、リーネは友人のにやにやと楽しげな目に気付く。靖満も照れくさそうな顔をしてそっぽを向いた。
「リーネ、そんなに靖満サンの精液独り占めしたいの?」
楽しげに訊かれて、リーネは顔が熱くなった。今さら否定のしようもなくて、ただアルルの腕をぎゅうとつかむ。
「もー、そんな顔しなくってもいいじゃん」
そう言ってアルルはリーネを抱き締める。奔放で少し意地悪で、けれどこうして抱き締められるととても優しい匂いがして、リーネは友人を抱き返して頬を寄せた。
「何かあったら僕の部屋に帰ってきていいからね。リーネがいなくなったら僕も寂しいから、セフレ呼んだりしてるかもだけど、リーネのためなら追い出しちゃう」
「アルル……」
「僕もリーネのことが大好きで大事だって忘れないでね」
うん、とリーネは涙をこらえて頷く。淫魔としてとても優秀で、可愛くて美しくて、リーネとは比べるべくもない彼が、いつまでも独り立ちできないリーネをずっと励まして支えてくれていた。ただ大事な友人だからというだけの理由で、多くのものを与えてくれた。
「ふふ、リーネやっぱり可愛い。それに、ずっと美味しそうになったね」
アルルは花のように微笑みながらリーネの頬を撫でて、リーネが口を開くよりも早く、赤い唇で口づけてきた。
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