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第4話
星依に初めて出会ったあの日、
彼方は恋人の浮気現場を発見してしまっていた。
当時付き合っていたのは職場の先輩で
年上の彼女。
職場でも美人だと噂されていた。
付き合い始めたきっかけは
同じ企画を担当した際に
「星が好き」という共通点が見つかり、
そこからお互い好意を持ち始めた。
それからお互い忙しいながらも
何度かデートもし、一緒に天体観測にも
行った。
最初のうちは彼女は星空を見て喜んでいたし、
彼方の話も興味を持って聞いてくれていた。
だがいつしか彼女は天体観測に誘っても
来なくなり、最終的には
「私別に星とか好きじゃないのよね。」と
言い出した。
天体観測なんかよりもショッピングに行きたい。荷物持ちやってよ、と。
でも彼方はそれでもいいと思っていた。
確かに最初の接点は星が好きだという
彼女の嘘から始まった。
だが彼女と過ごしてきた時間は確かだし、
天体観測じゃなくたって一緒にいるだけで
楽しかった。
むしろ自分に近づきたいがために
ついてくれた嘘を、嬉しいとさえ思った。
でもそう思っていたのは彼方だけだと
いうことを数日後、思い知らされる。
その日はクリスマス。
彼方は彼女と天体観測のイベントに
来る約束をしていた。
彼女が昼間は予定があるというので
彼方はイベント会場の近くにある
ショッピングモールでブラブラしている
ことにした。
それが、まずかった。
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