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第8話

そう言って抱きしめる腕に力を入れると 星依は抵抗をやめた。 「俺が怒ってる理由、分かってんのかよ。」 「ごめん、分からない。」 「・・・じゃあなんで謝りに来たんだよ!」 「星依がっ・・・」 「俺がなんだよ。」 「星依がいなくなると思ったら、 夢中だった・・・」 その言葉と痛いほどに抱きしめられた腕に 星依は言葉が出てこなかった。 星が好きだと嘘をついたのは俺で、 悪いのは俺なのに。 彼方はきっと、俺が楽しめるように いろんなことを教えてくれていただけなのに。 勝手に怒って、勝手に逃げて、 彼方のことを不安にさせた。 「ー・・・彼方、ごめん。」 「どうして星依が謝るの?! 星依はなにも悪くなー・・・」 「俺、ほんとは星に興味なんてなかったんだ。 あの日天体観測に来てたのも、 友達に可愛い子ナンパしようって誘われて ついてっただけ。 俺が本当に興味があったのは彼方だ。」 真剣な表情で聞く彼方に星依は続ける。 「お前と話したいと思った。 お前に好かれたいと思った。 だから星が好きだと嘘をついた。 本当に、ごめんなさいー・・・」 ああ、フラれるだろうな、なんて。 次第に視界がぼやけて彼方が見えなくなっていった。 でも涙越しに見える世界はとてもキラキラ していた。 「好きだよ。」 彼方がそう言ったから。 「星が好きだろうが好きじゃなかろうが 星依は星依だよ。」 僕に近づきたいって思ってくれて嬉しいよ、 と彼方は微笑んだ。 それに星依の視界は暖かい涙で 完全に支配された。

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