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第9話
ふと目線を感じて振り返ると、じっと祐樹を見ているクラスメイトがふたりいた。片隅で固まってひそひそ話しながら遠巻きに祐樹を見ている。
たぶん、あいつらなんだろう、と祐樹は思っている。
はじめはシャーペンとか消しゴムだった。あれ?忘れたかな?と思うことが何度かあって、誰かの仕業だと思い始めたところで、次は上靴やリコーダーが消えるようになった。
といっても、完全になくなるわけでもなく、次の日くらいにはあっさり目立つところで見つかる。
祐樹の困った顔やあわてる顔を見たいがためのいたずらか、単なる嫌がらせかはわからない。
でも授業の前になくなると、忘れ物としてカウントされるので困っていた。
さりげなく物がなくなったときに教室内を観察して、このふたりだろうと当たりをつけたが、どうしたものかなと迷っていたところで昨日の縦割りクラスがあったのだ。
あいつらだろうなと目星はついているが、こういうことは憶測では口に出せない。現場を押さえない限りは認めないだろう。
それがわかるから、祐樹はいままで騒ぎ立ててこなかった。
それなのにあの野郎、と大澤の顔を思い浮かべる。
こんな大騒ぎにしやがって。一体、どういうつもりなんだか。でもまあ、起きたことは仕方ない。ほっておけば、こんな騒ぎはすぐに収まる。
けれども、祐樹は甘かったのだ。
それは放課後の縦割りクラスの練習に行って、思い知らされた。
縦割りクラスの練習は、各学年のクラスから選抜されたメンバーで行われる。各クラスから五名選ばれた中に、嫌がらせの首謀者だと思われる遠藤と木村も入っていた。
偶然ではもちろんない。
立候補した遠藤と木村が、祐樹を推薦してメンバーに入れたのだ。ふたりともどちらかというと目立つタイプで、運動も勉強もかなりできる。
クラスの中心メンバーといってもよく、どうして自分にちょっかいをかけるのかわからない。正直言って祐樹はうんざりしていた。
気に入らないなら構わなければいいのに、わざわざどうして絡んでくるのか。相手にするのも面倒で無視していたが、すこしずつエスカレートしている気もしていた。
反撃するのがいいのか、はっきり現場を押さえるべきかと考えていた矢先の、今日の昼休みの大澤の襲撃だったのだ。
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