14 / 101
第3章 苦手な先輩
「はい、どうぞ」
ポテトやバーガーの乗ったトレイがテーブルに置かれて、祐樹は微妙に頭を下げた。
「ありがとうございます」
大澤のおごりで駅前のハンバーガーショップで、狭いテーブルを挟んで向かい合っている。
「なんでおれに構うんですか?」
「言っただろ? 祐樹が気に入ったって」
「かわいそうだからですか?」
「なにが?」
「色々ものを隠されたりするのが」
「ああ、それはじきにおさまるよ」
大澤があっさり言って、ポテトを何本かまとめてつまんで口に放り込む。
「なんでそんなこと、言い切れるんですか?」
「幼稚なお子ちゃまの好きな子をいじめたいって奴でしょ。それで自分を意識してほしいっていう自意識過剰な子供の手口だからね。でももっと他の手段があるってわかったらやめるよ」
なにかいろいろ突っ込みたい言葉ばかりだが、祐樹は最後の言葉にだけ反応することにした。
「他の手段って?」
「俺みたいに会いに行って話をしたり、親切にしたり、デートに誘ったりってこと」
そんなことをいいながら、大きな手と口でハンバーガーをあっという間に食べてしまった。
「いじめるよりもっと効果的だろ」
それを聞いた祐樹は黙って顔をしかめたが、つまり教室にわざわざ来てあれこれ言ったのはお子ちゃまたちに見せつけるためだったらしい。しかもデートに誘うって。
これは感謝するべきところ? でも素直にありがとうと言うには祐樹のこうむった迷惑は大きい。
祐樹は黙り込んだままストローでコーラを吸い上げた。炭酸に強くないので、すこしづつしか飲めない。ごくごく飲んで、さっさと店を出たいのに。
炭酸がのどにしみるので顔をしかめたら、誤解されたようだ。
「そんなに嫌? 俺に構われるの」
「べつに嫌じゃないですけど」
「けど?」
「苦手なんです」
「俺が?」
「はい」
間髪入れずに返事すると大澤がげらげらと笑いだす。
そんな大声あげて笑っていても、やはり王子さまはかっこいい。店のなかの女の子たちがちらちらとこちらを見ていて祐樹は落ち着かない。
ともだちにシェアしよう!