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第15話
「瞬殺だな。いやー、いいわ。普通、先輩にそんな口きかないのにさ。見た目はかわいい姫なのに、口開いたらくそガキとか」
祐樹がぎろっと睨みつけると、くっくっくっと声を殺してまだ笑っている。
「ごめん、姫は禁句なんだっけ」
「全然うれしくありません」
「そりゃそうだよな。でもほんと、口きくと意外なくらい男っぽいよな」
「兄が三人いるんで」
「へえ、男四人兄弟? 珍しいね。あ、まだほかにいるの?」
「いません」
まだほかにって、どんな大家族設定?
「そうか、それでけっこうおおざっぱというか、男っぽいというか。運動神経もかなりいいよな」
縦割りチームの練習を思い出したらしい。小柄な祐樹は組体操のような応援競技で最上段に配置されている。
「見た目が繊細そうだから、そのギャップがいいよ。男らしくてさ」
男らしいなんて初めて言われた。祐樹の戸惑ったようすに、大澤がまた笑う。ほんと王子さまだなと、そのさわやかな笑顔に納得する。
自分に構わないでくれれば、大澤のことはべつに嫌いではなかった。
「四人兄弟ってどんな感じ?」
「一番年の近い兄でも四つ上なんで、あまり相手にしてもらえない感じです。その上は二才違いと年子なんで、上三人でけんかばっかりというか、取っ組み合いもしょっちゅうっていうか。巻き込まれることも多いけど、さすがに最近は減りました」
「じゃあ、俺とタメの兄貴とその2コ上とさらに1コ上? けっこう離れてるんだな」
「おれは予定外だったんじゃないですか」
「うーん、コメントしづらいね」
大澤が苦笑して、ストローに口をつける。
「すいません。仲が悪いわけじゃないですよ。末っ子で年がちょっと離れてるんで、わりとかわいがられてるとは思いますけど」
「ああ、年の離れた末っ子はかわいいかもな」
正直言うと、上のふたりは祐樹をかなりかわいがっている。祐樹が小学生のころは「うちの祐樹はだれよりかわいい」などと真剣な顔で猫かわいがりしていたほどだ。
それに焼きもちを焼いた三男にはしょっちゅう意地悪をされて、けんかばかりしていたが。
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