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第16話

 でもそんなことを大澤に告げるのはなんだか恥ずかしくて、どうでもいい質問を返した。 「大澤先輩は兄弟いるんですか?」 「生意気な中三の妹が一人」 「へえ」  あからさまに興味のない相づちに、大澤が楽しそうにまた声をあげて笑う。だってほんとに興味ないし、と祐樹はポテトをかじる。 「じゃあ、俺が質問するよ。好きな食べ物は?」 「お寿司、焼肉、ピザ、唐揚げ、ラーメン」  やけくそ気味に祐樹は返事する。  「なんかいかにも小学生男子って感じだな。あー、でも俺の好物とそんな変わんないか。んー、好きな歌手とか、音楽は?」 「家に親や兄のCDが転がってるんで適当に借りて聞く感じ」 「具体的には?」 「スティービー・ワンダー、マーヴィン・ゲイ、サイモン&ガーファンクル、ローリングストーンズ、マイケル・ジャクソン、エアロスミス、クイーン、とか」 「ずいぶん大人っぽい曲を聴いてるんだな。お兄さんたちの好みだろうけど。洋楽好き?」 「はい。ノリがいいのが好きみたいです」 「いや、お兄さんたちじゃなくて、祐樹の好み」 「わかりません。あったら聞くけど、買ってまで聞きたいのってないんで」 「そうか。じゃあ、好きな女の子のタイプは?」  祐樹は顔をしかめた。つい二ケ月前まで小学生だった祐樹には、女子は面倒な生き物という認識しかない。私立中学に来て男子しかいないのでほっとしたというのも正直なところだ。 「女子は好きじゃない」 「お、問題発言だな」 「あいつら、人のことかわいいとか女の子みたいとかバカにするから嫌なんだ」  小学生時代の女子にはいい思い出がない。  無理もない、と大澤は祐樹のふてくされた顔を見る。ふてくされてもそこらの女子よりよっぽどかわいい顔をしている。  姫という呼び名も納得のかわいさだ。  小学生女子からしたらじぶんよりかわいい男子なんて、目障りだったり意地悪したくなったりするだろう。あるいは気になっても告白なんかできない、微妙な存在だったかもしれない。

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