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第17話
「まあまあ、祐樹はほんとにかわいいし、ごめんごめん」
ぎろりともう一度睨まれて大澤は悪びれずに肩をすくめる。
「でもきっと高校生くらいになって背が伸びたら、すごくもてるよ。お兄さんたちは祐樹に似てる?」
「全然。兄三人は父親似なんです。背も高いしまあまあかっこいいんだと思います。けっこうもてるし彼女とかいるみたいだし。おれだけ母親似なんで、親戚からはちょっとタイプが違うって言われます」
「そうかあ、かっこいいお兄さんたちとかわいい祐樹か。いいなあ、おまえん家、楽しそうだ。俺も男兄弟がよかったな」
「楽しくないです。騒がしいし、兄たちはでかくて邪魔だし」
「あ、そうなの?」
「三人とも先輩と同じくらいです」
「へえ、じゃあ祐樹もそのうち背が伸びそうだな」
そのあともぽつぽつと一問一答を繰り返して、祐樹が得た大澤の情報は、数学と科学が得意、近くの女子高に通う同じ学年の彼女がいる、好きな果物は梨とみかんなどなど。
同じだけ祐樹についての情報も与えたわけだが、いったい何の役に立つんだか。
「おう、遅かったな」
家に帰ると、三男の達樹がお玉片手に待ち構えていた。
「ちょっと手伝えよ」
高橋家では高校生になると週に一度、食事当番という日が割り振られる。毎週ローテーションで、今週は火曜が長男、水曜が次男、金曜のきょうは三男の達樹の担当と決まっていて、夕食を作らなくてはならないのだ。
何を作ってもいいし、どんな出来でも文句をいわずに食べるというルールなので、気楽に作れるが、手伝いは欲しいらしい。
自分も高校生になったら当番があるとわかっているので、逆らわずに着替えてキッチンへ手伝いに行く。ちなみに母親は手伝ってくれない。
「今日は何?」
「焼きそば。そこのサラダ用のジャガイモ、皮むいてチンしてつぶして」
達樹の料理は麺が基本で、パスタやうどんやそばが多い。きょうの焼きそばには豚肉ともやしと小松菜がどっさり入っていた。
「わかった」
祐樹は適当にジャガイモを切って耐熱皿に並べてレンジに入れた。
ポテトサラダは達樹の好物で、何度も手伝わされているので手順はわかっている。その横で達樹はみそ汁の具にするキャベツとわかめを刻んでいる。
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