18 / 101

第18話

「学校どうよ? 縦割りクラスだっけ、それで今日も遅かったのか?」 「今日は違う。先輩にハンバーガーおごってもらった」  祐樹はジャガイモをつぶしたあと、達樹が切ってあったハム・キュウリ・ニンジンを加えてマヨネーズを入れてぐるぐる混ぜた。 「先輩? 部活も入ってないのに?」  週に二日、近所の空手教室に通うために祐樹は部活に入っていない。  祐樹の学校には空手部がなかったし、小学生の頃から通っている道場に愛着があったから、あっても入らなかっただろう。 「うん、縦割りクラスで知り合った先輩。達樹と同じ高二」 「俺とタメ? 祐樹、そんな上の先輩と遊んでんの?」 「うーん? 遊んでるというか、ふたりで会ったの初めてだし、ちょっとしゃべっただけ」 「話合うのか? そいつ、大丈夫かよ?」 「どういう意味?」 「や、祐樹はかわいいからさ。変な奴じゃないだろうな」 「なに、変な奴って。高等部の生徒会長で学年首席だよ。近くの女子高の彼女持ち」 「すげー奴なんじゃん。なに話すの?」 「好きなマンガとか趣味とか…?」 「ナンパかよ。あ、でも彼女持ちだっけ」 「ナンパじゃないし。見た目、すごいかっこいいよ。頭もいいし、王子って呼ばれてる」  教室まで押しかけてきて困らされていることは告げないでおく。 「なんだそれ。サラダ、ちょっと梅ドレも混ぜて」 「これでいい? あ、おいしい」 「で、その先輩はいい奴なのか?」 「よくわからない。悪い人じゃないと思うけど」  祐樹に私学に行くように勧めたのは、この達樹だった。兄三人は近くの公立中学から公立高校に進学したから、自分も当然そのつもりでいたが達樹が反対したのだ。  祐樹が通う予定の公立中学がものすごく荒れていて、自分や兄たちのころよりもっとひどい状態になっているから祐樹を通わせるのは心配だと両親に話して、中学受験を勧めたのだ。  祐樹がそこらの女子よりかわいいことは両親もわかっていたし、そのせいでなにかトラブルになるのは避けたいという気持ちと公立中学の学力的な心配とで急きょ、祐樹の受験は決まった。

ともだちにシェアしよう!