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第4章 生け花展にて

「男ふたりって浮くんじゃないですか?」  大澤から渡されたチケットを手にして、祐樹は首をかしげた。ふたりで来たのはデパートの催し物会場で開かれている生け花展だ。  ドタキャンした綾乃に託されてきたというチケットには、代わりにふたりで行ってきてねとメモがついていた。 「そうか? でも今日が最終日だし、綾乃がせっかくだから行ってきてって言うし。祐樹はいや? 俺、遠慮しようか?」 「いえ、べつにいいです。大澤先輩と一緒で注目されるとかいまさらだし、先輩が平気なら」 「祐樹は繊細そうな見た目のわりに意外とそういうとこ、図太いよな」 「中学時代で慣れたんで」  綾乃が大澤にチケットを託してきたので来てみたが、そもそもふたりとも生け花に興味はない。でもチケットをもらったので会場に入ってみた。 「なんか、思ってたのと違う」 「ああ、俺も。もっと小さい、花瓶に花が入ってるのを想像してたんだけど」  生け花展というから床の間に飾ってあるような花を見るのかと思っていたら、会場に入ってみればまず正面に高さ3メートル、横幅は5メートルはありそうな大きな立体の木と花のオブジェがどどんと据えられていた。  名前などわからないが10種類以上の色鮮やかな花が枝を広げた木とともに大胆に活けてありプレートには「情熱」というタイトルが付いていた。たしかに作者のパワーが伝わってくるような気にあふれている作品だ。  広めに間隔をとった周囲にはそれぞれ、大きさも素材も様々な作品が飾られていて、どれも単純に花瓶に花が活けてあるわけではなかった。  花や木だけではなく、布や石やタイルや和紙なども使われていて、祐樹の持っていた生け花のイメージとはまったく違う世界がそこにあった。

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